2020-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2020

20-01.jpg

【ネコヤナギのリース】

 

ケルト語で「水辺に近い」というほどの意味があるヤナギの中で、銀白色に輝く花芽が特徴のネコヤナギは、ヒヤシンスやスイセンといった早春の花と束ねるのが定番ですが、この写真のようにリースにしても素敵です。

 

その作り方はいたって単純で、環状にしたサンキライの枝を土台にして、同じ方向に絡めて仕上げます。コツとしては、花芽の位置などはあまり気にしないことです。少し乱れた感じの方が美しく仕上がります。おひとつ、¥3,300。

 

ちなみに、ネコヤナギの花言葉は「自由」です。このリースのように、新しく作るものををどう仕上げるか。先人が考えた花の名前の語源や花言葉というのが、そのヒントになる時もあります。(2020.1) 

 

 

 

20-02.jpg

【房アカシアの香り】

 

房アカシアが「ミモザ」と呼ばれるのは、19世紀、オーストラリアから西洋各地の庭園に導入された際、その羽状の葉が学名「ミモザ」のオジギソウに似ていたからで、花屋にはイタリア産が年明けから出回ります。

 

それは、同じ頃に国産の「ミモザ」として流通する銀葉アカシアとは違うわけです。南フランスで香料の原料として栽培されているように、こちらには強い香りがあります。また、長い葉は確かにオジキソウと間違えそうです。

 

そして、価格も3倍ほどしてしまいます。そうなると、リースやスワッグを作る場合、ユーカリなどを加えて安く済ませようとしがちですが、そんな事をしてしまえば、折角の房アカシアの香り、「ミモザ」の香りは台無しになってしまうのです。(2020.2)

 

 

 

20-03.jpg

【開店祝いのブーケ】

 

花贈りのひとつに開店祝いがあります。その場合に重宝するのが器付ブーケです。葉を巻いたガラス器にブーケを飾るこの様式は、場所をとらず、選ばず、空間を華やかに演出してくれます。器付ですから、いただく側も花器を用意する必要がありまん。

 

もっとも、高さや大きさという点においては、給水性スポンジに生けたフラワーアレンジメントに比べるとこの器付ブーケは見劣りします。けれども、折角の真新しい空間において、贈られた花がその雰囲気に調和させる事も、花屋は考えなければならないのです。

 

だから、新しい始まりのお祝いに贈る花に、奇抜さや流行は必要ありません。目立ち過ぎず控えめに、その季節の花を贈る方が喜ばれる事を私は知っています。贈られた人の心の中に一番残るもの、それは季節感だからです。

(2020.3) 

 

 

 

20-04.jpg

【母の日の花贈り】

 

たとえば、十字軍に加わったフランスのルイ9世が、母のために花をペルシアから持ち帰ったとか、戦後の日本に駐留していたアメリカ兵が母国に花を通信配達で贈ったというエピソードを思い出すと、人は平安を望む時、花に気持ちを近づける気がしています。

 

それは、花が日常を慈しむ心を取り戻してくれる、身近な装飾だからでしょう。もっとも、来月には母の日がありますが、少し窮屈な今年は、花を贈りたいと思っている方が多いのかもしれません。

 

この写真は、昨年束ねた母の日のブーケです。小さめのバラにサポナリアやオルラヤを合わせて田園風の優しい雰囲気に仕上げました。花贈りは、贈られた以上に贈る人の心も安らぐもの。そして、手に触れれば、心がさらに鎮まるものでもあります。(2020.4)

 

 

 

20-05.jpg

【花のアイデア、ブーケの作り方】

 

先般、新型コロナウィルス禍における状況を考えて、レッスンを一定の間、休止いたしました。人との接触を減らす行為が感染拡大を抑えるためには重要ですし、何より、落ち着かない気持ちが続くばかりで、楽しくはありません。

 

むろん、オンラインで続けるという方法もありますが、当然、レッスンの質は下がりますし、花材を宅配する方の負担を増やしてしまいます。こんな時は、家の周りの自然に目を向けてみるなど、別な角度から花を楽しむ機会と捉えてみたいものです。

 

この度、簡単な花飾りやブーケ作りを、Instagram、IGTV、YouTubeで公開する事を始めました、作り方も説明しています。妄想するだけでも学ぶ事になるでしょう。秘密にしていた花のアイデア、ブーケの作り方です。(2020.5)

 

 

20-06.jpg

【私の作業台】

 

長さ2メートル40センチ、奥行き92センチ、厚さ3センチ。私がいつも花を束ねている作業台の大きさです。ホームセンターで購入して13年が経ち、無塗装のシナ板はあちこち古びてきました。

 

経年劣化といえば、それまでですが、これは皆さんが何度もレッスンを受けてくださった証でもあります。先月から公開している動画で観られるように、窓から天板に差し込む光は、ハンマースホイの絵画のように美しく反射しているではありませんか。

 

ブーケ作りだけではなく、時には、麻のクロスを広げて宴の卓としても重宝している私の作業台。緊急事態宣言に伴い店舗は休業しておりましたが、今月からまたこの作業台が活気付くに違いありません。トケイソウのリースが出来上がるのも、もうすぐです。(2020.6)

 

 

20-07.jpg

【花の動画について】

 

すでにご覧いただいた方も多いと思いますが、この5月から花の動画をYouTubeなどで公開しております。撮影、編集をお願いしているのは私の自転車仲間です。先の自粛期間中に、彼女が動画撮影の仕事もしている事を偶然知り、期せずして始まりました。

動画は、あたかも観る側が束ねているかのごとく、カメラは作る手元に焦点を当てています。作業工程をわかりやすく、花そのものが主役になる趣向です。また、必要最小限の字幕や的確な編集は、毎回、私好みに仕上がるのがありがたいところ。

これまで、トーマル峠や三国峠、上富良野町の未舗装路を一緒に走ってきた自転車仲間ゆえ、呼吸が合うのかもしれません。今後も季節ごとに撮影は続きますが、次の動画を一番楽しみにしているのは何を隠そうこの私です。

(2020.7)

 

 

20-08.jpg

【ミルトの鉢植え】

 

ミルトは地中海地域に自生する常緑樹で、その葉や果実からはリキュールが作られたり、料理に使われるハーブでもあります。英語ではマートル、ドイツ語ではミルテと呼ばれ、シューマンの歌曲「ミルテの花」とはこの花のことです。日本では梅のような花姿から、銀梅花とも呼ばれます。

 

また、聖書やギリシア神話でもよく知られていて、古くから、結婚式には欠かせない縁起植物です。ミルトの花冠はティアラの原型でありますし、少し前に、メーガン妃が持ったブーケの中には王室の庭から詰んだミルトの枝が入っていたといいます。

 

そんなミルトの鉢植えがこの夏初めて入荷しました。札幌では、冬の間は室内に取り込む必要がありますが、花や果実は鉢のままでも楽しめます。そういえば、サルディーニャ島では毎年8月、ミルト祭りが催されますから、今年は店前でもお祭り気分。ミルト酒を炭酸水で割って乾杯です。(2020.8)

 

 

20-09.jpg

【リシアンサスについて】

 

リシアンサスには、ユーストマ、テキサスブルーベル、プレーリージェンシャン、トルコ桔梗など様々な呼び方があります。ユーストマは現在の学名、テキサスブルーベルは、この花の自生地に由来、プレーリージェンシャンは、牧草地のリンドウの仲間というほどの意味です。

 

トルコ桔梗は、植物学者の牧野富太郎氏が「その呼び方は感心しない」と指摘したように、トルコとも桔梗とも関係がありません。でも、馴染み深い人も多いでしょう。そして、リシアンサスは、19世紀イギリスでつけられた旧学名で、花卉農家や花屋の多くが今でもそう呼んでいます。

 

ブーケにする場合は、ヴェンダースの映画「パリ、テキサス」に出てくる乾いた大地を思い出して、禾本科植物とともに田舎風に仕上げるのが定番です。ほら、ライ・クーダーの音色が聞こえてくるでしょう。(2020.9)

 

 

20-10.jpg

【ハンギングバンチについて】

 

ハンギングバンチとは、スワッグの一種で、英語で「束を吊るす」というほどの意味です。近ごろ、私達がスワッグと呼んでいる壁飾りの多くは、イギリスの花屋がいうところの、ハンギングバンチを指します。

 

リースやガーランドのように作りこむ必要がなく、束ねるだけで気軽に楽しめることが、ハンギングバンチの魅力です。たとえば、この写真のように、アジサイ、ユーカリ、ダスティーミラーの組み合わせは、秋から冬へと向かう季節の移ろいを感じさせます。

 

もっとも、このハンギングバンチも、ブーケを作る要領で茎をスパイラル状に束ねて作りますと、壁に飾った時、結束の部分が浮から見ても美しく仕上がります。リボンを用意する必要がなくなるわけです。(2020.10)

 

 

20-11.jpg

【WINTER20】

 

上段左、冬支度のリースは、2種類のダスティミラーとユーカリの組み合わせ。中央、クリスマスのリースは、モミとコニファーに、グロボラスの蕾がアクセント。右、ナンキンハゼのリースは長く楽しめる逸品です。

 

中段左、ヒヤシンスの鉢植えは、お正月に向けてゆっくりと開花します。中央、球根型のろうそくは、この写真の他に、昨年から特大も加わりました。右、ユーカリのリースは、4週類を絡めることがポイントです。

 

下段左、お正月のリースは、縁起植物の取り合わせ。中央、松飾りは、根引松ならではの趣があります。右、お正月の器付ブーケは、アマリリス、スイセン、金柑、お多福南天などを束ね、松葉を添えたバロック調の仕上がりです。青竹器に飾っています。(2020.11)

 

 

20-12.jpg

【四つの灯り】

 

「四つの灯り」は2010年から続くアドベント期間の催事です。毎年12月の第1週、福井あゆみさんが作るキャンドルを扱う5店が集って、クリスマスにまつわる商品とともに展示販売しています。

 

今年は新型コロナウィルス禍の中、縮小しての開催となりました。キャンドルの灯りは、人の心も明るく温かくします。少しでも不安を忘れる事ができたとなれば幸いです。

 

さて、お陰様でミニ大通に根を付けて13年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 

えっ、キャンドルの販売といいながら、焼菓子やヤドリギが人気だったんでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2020.12)

2019-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2019

19-01.jpg

【ブーケ作り、リース作り】

 

多くの皆さんは、ブーケやリース作りに必要な事はセンスだと思われているようですが、それは違います。突然、イメージがわいて作れるというのは幻想です。言葉を知らなければ小説が書けないように、花を知らなければ作る事は出来ません。

 

自分が良いと思ったブーケやリースを糧にして、植生、季節、神話、宗教、民間習俗、そして、市場に流通する期間を把握する事で、より良い仕入れが出来て、美しいブーケやリースが生まれます。知識と経験が必要なのです。

 

しかし、ブーケやリース作りは、他人を真似る事で簡単に出来てしまう怖さがあります。今から20年前、パリから来た花屋にいわれました。「パリの花屋の真似はわかったから、あなたのブーケを見せて!」とね。(2019.1)

 

 

19-02.jpg

【ミモザをフワフワで】

 

ここ数年、ミモザをリースにして楽しむ花屋が増えた事もあって、ミモザは輸入品も含めて様々な種類が市場に多く出回るようになりました。とはいえ、ミモザは切り花としては日持ちがあまり良くありません。

 

雪国の室内ではすぐ乾燥してしまい、その輝かしい黄色はあっという間にくすんでしまいます。だから、仕入れたミモザは水揚げをした後、ビニール袋をで覆って湿度を加えて乾燥を防ぐ事が重要です。こうする事で、蕾もよく開きます。

 

この写真のように、そんな下ごしらえをしたミモザで作ったリースはフワフワの状態で仕上がるのはいうまでもありません。この春を祝うカーニバルの黄色を手にする時、フワフワで受け取るかどうかで、その喜びは違ってくるのです。(2019.2) 

 

 

19-03.jpg

【緑のブーケ】

 

緑の枝葉で作るブーケの良いところはいくつかあって、まず、眺めているだけで心が安らぐという事。それから、花の質感が強調されて季節がより感じられるという点。また、飾る場所を選ばず、長く楽しめるという事も特筆すべきでありましょう。

 

とりわけ、春においては、枝の芽吹きや若草色のスノーボール、野菜のような球根花など様々な緑が集まりますから、ブーケ作り本来の醍醐味でもある「相反するいろいろなものを混ぜ合わせる」といった面白さが味わえます。

 

緑といえば、3月17日はセントパトッリックスデーで、緑を身につけて祝うアイルランドの祝祭日です。緑のブーケを飾って、ギネスを飲みなら、ドロレス・オリオーダンの歌声を聴くのが、私のセントパトリックスデー。(2019.3)

 

 

19-04.jpg

【オレンジ・プリンセス】

 

チューリップは花弁の特徴によって様々な呼ばれ方をします。一重咲き、八重咲き、パーロット咲き、フリンジ咲き、ユリ咲きなど、花弁の数や形から呼ばれるものもあれば、ビリデ咲き、レンブラント咲きなど、花弁の模様から名付けられたものなどです。

 

そんな中、この写真のオレンジ・プリンセスは、八重咲きであり、レンブラント咲きという珍しさがあります。花屋ではチューリップのシーズン最後に出回る草丈の短い品種で、花弁にある茶紫の透かし模様には、絵筆で描かれたような美しさがありましょう。

 

そしてご覧のように、このチューリップとスノーボールの組合せは、春の定番です。イースターのブーケとして、あるいは、サンジョルデイのブーケとして束ねる時、雪どけたミニ大通は春を迎えています。(2019.4)

 

 

19-05.jpg

【ブーケとサイクリング】

 

ご存知の方も多いかと思いますが、私の趣味はサイクリングで、14年ほど続いています。何がそんなに楽しいのかといえば、ブーケ作りのヒントがこの遊びには隠されているからです。

 

たとえば、田舎道で樹々や田園風景を眺めたり、季節を感じる花畑に出会ったりしますと、明日作るべきブーケの手本が見つかります。クリスチャン・トルチュがいうように、美しいブーケの組み合わせは身近な場所で既に存在しているのです。

 

それからもう一つ、天候の変化や道の間違い、パンクなど、予測不可能な事がおこります。その際、冷静な判断が必要となるわけですが、ブーケ作りもまた自然が相手。仕入れる時も束ねる時も、迷いがなくなったのはサイクリングを始めてからなのです。(2019.5) 

 

 

19-06.jpg

【料理とブーケ作り】

 

ブーケのレッスンをしていて気が付いた事の一つに、ブーケ作りは料理に似ているというのがあります。たとえば、予算をもとに、旬の素材を吟味して、組み合わせを考えるという作は、まるで献立を考える気分です。

 

そして、材料を切り分け、主役、脇役、アクセントとなる花や枝葉をテーブルに並べる下処理は、料理でいうところの下ごしらえ。そう考えていたけければ、初めての方でも段取りを知ればブーケは上手く束ねられるのです。

 

先日、花婿がブライダルブーケを作る機会がありました。新郎が天ぷらを揚げる仕事をしていたので、折角だから束ねてみましょうとなったのです。初めてとは思えない手際の良さ。やはり、料理とブーケ作りは似ているのです。花嫁をより幸せに導きました。(2019.6)

 

 

19-07.jpg

【フランボワジエについて】

 

フランボワジエとは、フランス語で木苺の木というほどの意味で、新芽の鮮やかな緑とプリーツ状の葉が美しい花材です。フランス語名で流通しているのは、この枝葉がフランスの花屋で昔から広く使われているからでしょう。

 

木苺の葉なんて庭にあると思うかもしれませんが、重要と供給で成り立つ花屋では入手が難しいものが多くあります。フランボワジエもそのひとつで、札幌の市場にはこの夏から本州産が少しずつ入荷し始めたのです。

 

もっとも、北海道でも長沼町の若い生産者がフランボワジエの栽培を始めるようで、先日、出荷してほしい時期や葉の大きさなどをお伝えしました。こういった生産者との繋がりは、ブーケをより季節感のある自然な仕上がりに近づけてくれます。(2019.7)

 

 

19-08.jpg

【グラジオラスのブーケ・ファゴ】

 

夏から秋にかけて庭を彩るグラジオラスは、長い花茎の先に複数の花をつける事もあって、どちらかといえば、大きな花飾りやブーケに向いています。そのため、日頃は取り扱う事がほとんどありませんが、真夏に作りたくなるのが、グラジオラスのブーケ・ファゴです。

 

この写真にように、切り分けたグラジオラスを垂直に束ねて、パニカムを少しだけ添えて仕上げます。ファゴとはフランス語で薪や薪束というほどの意味で、ブーケは自立しますから、水のはったお皿に置けば暑い季節でも一週間ほど楽しめるというわけです。

 

もっとも、このブーケは1995年にクリスチャン・トルチュが雑誌でも紹介していたことがありますから、ご存知の方もいるかもしれません。グラジオラスだからこそ出来る美しいブーケです。(2019.8)

 

 

19-09.jpg

【出張レッスンについて】

 

出張レッスンの始まりは、今から20年ほど前の事で、ギャラリーからの誘いで参加した企画展示がきっかけです。併設するカフェにおいて、飲み物付きで、スパイラルブーケ作りを体験していただくというものでした。

 

その当時、花を教えるといえば、場所は文化センターなどで、内容は資格取得やデザインを目的とする事が一般的だった時代です。その日限りのその場所で、季節を楽しんだこの時のレッスンは、どこか自由で新しさもあって、私の気質にぴたりと一致しました。

 

その後も遠く地方に出向いたり、野外で行なったり、料理教室と一緒だったり、ありとあらゆる場所で行なってきた出張レッスン。来月は厚真町の古民家を訪れて、板の間に座って秋のリースを作ります。(2019.9)

 

 

19-10.jpg

【シクラメンについて】

 

プリニウスの時代には薬草として、バロック時代のヨーロッパでは食用だったシクラメン、正確にはペルシア由来のシクラメン・ペルシカムも、今では秋から春までを彩る観賞用の鉢植えとして多くの品種が出回っています。

 

株の大きなものであれば、茎を螺旋状に引き抜いて切り花として小さなブーケに。また、美しく乾燥する白い花はリースの素材にもなります。むろん、葉を巻いたガラス器に入れて飾れば、ちょっと洒落た贈り物にもなるわけです。

 

ちなみに、秋のコッツウォルズなどではシクラメンの絨毯が見られますが、あれは原種でヨーロッパ由来のシクラメン・ヘデリフォリウムです。その名の通り、葉の形がアイビーに似ていて、私たちが知るこの写真のシクラメンとは種類が異なります。(2019.10)

 

 

19-11.jpg

【モミのガーランドについて】

 

ガーランドとは、紐に植物を括りつけた花飾りのひとつです。その歴史は古く、紀元前からあったといわれており、花網、花輪、花冠などの意味があります。今日ではクリスマス飾りとして、私たちに馴染み深いのはいうまでもありません。

 

たとえば、毎年11月中旬、アメリカのオレゴン州から上質なモミ枝が市場に入荷します。多くの花屋はこのモミを使って、リースやスワッグ、そしてこの写真のように、ガーランドを準備するわけです。

 

リトアニア産の細く目立たない麻紐を用いて長さ70センチ程に束ねて仕上げれば、壁飾りとしてはもちろんの事、卓上飾りとしてもお使いいただけます。おひとつ、¥5,500。期間を決めての予約販売です。(2019,11)

 

 

19-12.jpg

【ヤドリギの幸せ】

 

フランスの新年には、ヤドリギを飾る習慣があります。寒さに凍えた妖精がこの植物に移り住む逸話があるからだそうで、家に招き入れれば幸運が訪れるというわけです。

 

そんなエピソードを思い浮かべながら、今年もヤドリギを仕入れました。切り分けられるのは鮮度が良い証です。妖精が沢山居るにちがいありません。小分けにして販売しております。

 

さて、お陰様でミニ大通りに根を付けて12年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 

えっ、この秋の怪我で髭が剃れずにいたところ髭面が似合うと言われて調子に乗っているでっしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2019.12)

2018-09-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2018

18-01.jpg

【柿渋染めの花鋏入れ】

 

レッスン中のある時、花鋏入れが話題に上りました。買った時の箱に収めていたり、タオルに包んでいたり、ペンケースを転用したりと、皆さんお気に入りがなかなか見つからないご様子。そこで、出来上がったのがこの柿渋染めの花鋏入れです。

 

製作を依頼したのは柿渋染めの専門、キクチジュンコさんで、どれひとつとして同じものがないのも魅力的。素敵に仕上げていただきました。何でも、フランスや東欧などの丈夫な古布を素材にしているそうで、しっかりした作りは花鋏を安全に持ち運べます。

 

また、見えない内張の仕上がりがお見事なのは、キクチさんのお人柄でありましょう。10周年を記念したオリジナル商品ではありますが、まずはレッスン参加者のお手元へ。(2018.1)

 

 

18-02.jpg

【白磁の花器】

 

この白磁の花器は開店10周年を記念して出来上がったオリジナル商品です。製作を依頼したのは、ブーケレッスンがご縁で知り合った陶の専門、内藤美弥子さんで、どれひとつ同じものがないのも魅力的、素敵に仕上げていただきました。

 

何でも、ロクロを引かず、型も使わず、削る事で磁土を成形しているそうで、なるほど、この静謐で歪みのある輝きや、接地面の美しさ、そしてどこか古くて新しい印象は、そういった独自の技法から生まれているというわけす。

 

白磁の花器はおひとつ、¥9,720から。控え目ながらも芯の通った彫刻的な佇まいは、20世紀イタリアの画家、ジョルジョ・モランディが好んで描きそうではありませんか!きっと、花をより美しく飾っていただけます。(2018.2)

 

 

18-03.jpg

【スイートピーについて】

 

プラントハンターがシチリア島でスイートピーを見つけたのは19世紀のこと。それゆえ、この花は聖書やバロック絵画には登場しません。イギリス王、エドワード7世が好んだように、アール・ヌーヴォーの時代に流行し、今日の花屋に並んでいます。

 

和名は麝香連理草。連理草が夏の季語であるように、初夏の野原で這いつくばるのが本来の姿です。ところが、日本では卒業式シーズンに合わせて春に出回りますから、つい花屋はチューリップなどと束ねてしまいます。

 

でも、この花の美しさが際立つのは、芍薬やバラとの組み合わせです。もし3月に束ねるなら、スイートピーを主役にして、それも25本は使ってシチリアの田園を意識すれば大丈夫。香り漂う素敵なブーケが出来上がります。(2018.3)

 

 

18-04.jpg

【母の日アンケート】

 

先日、インスタグラムを利用して、アンケートを行いました。白とピンク、2種類のブーケから母の日に贈るならどちらの色かという質問です。結果は44:56でピンクが白をわずかに上回りましたが、ほぼ同等といえましょう。

 

きっと、どちらも愛情豊かなバラのブーケである事と、日本で作出されたこのロゼット咲きのバラは、感謝を伝えるのに相応しい美しさがあるからかも知れません。贈っても、贈られても、そして束ねても幸せな気分になるわけです。

 

白ならシェドゥーブル、ピンクならアムルーズ・トワやエレガント・ドレスといった品種を選んで、スノーボールと空木の枝葉を加えれば、母の日に贈るブーケが今年も出来上がります。(2018.4)

 

 

18-05.jpg

【ライラックのブーケ】

ペルシア語で花を意味する「lilak」が語源のライラックは、現在のイランが原産で、冷涼な地域で育つ花木です。私の住む札幌では市を象徴する木でもあり、新緑が美しくなる5月の終わりとなれば、その芳醇な香りが街に漂います。

 

花屋では、冬の間からオランダ産が並びますが、これからの時季に、少しだけ出回る地物のライラックをたっぷり使ったブーケは年に1度の喜びであり、札幌の花屋の特権でもありましょう。

 

この写真のように、美しいリラ色を引き立たせるべく、リョウブとスノーボールの緑を加えて束ねるのがここ数年のお気に入りです。出来上がったブーケをミニ大通のベンチに置いたら、ハート型をした葉とともに、緑溢れる5月の札幌に幸せを与えてくれます。(2018.5)

 

 

18-06.jpg

【スモークツリーのリース】

 

スモークツリーは雌雄異種の落葉樹で、花屋には初夏から秋に出回ります。とりわけ、その名が示す通り、開花後の花柄が煙状になった雌木においては、かれこれ30年ほど前から、初夏のフラワーデザインの花材として欠かせない存在です。

 

ただ誤解を恐れず申せば、このヒマラヤ原産の花木はユーカリのように存在感があり、花柄は20センチほどありますから、ブーケにするよりもリースにする方がその良さは引き立ちます。また、彩度の低い赤や緑の色の花柄が美しく乾燥する事も魅力的です。

 

その作り方は簡単で、環状にしたサンキライの枝に、葉を取り除いた花柄を絡めれば、スモークツリーのリースはあっという間に出来上がます。直径約27センチで、おひとつ、¥5,400。飾る場所を選ばない、涼しげな夏のリースです。(2018.6)

 

 

18-07.jpg

【花冠について】

 

写真はつい最近仕上げた花嫁の花冠で、子供の頃にタンポポやシロツメクサを摘んで遊んだ事や、トーベ・ヤンソンのムーミンに出てくるスノークのお嬢さん、あるいは、チェコの映画「ひなぎく」を思い出しながら作りました。

 

要領はリース作りと同じで、環状にしたサンキライの土台に、スモークツリー、ミズキ、カモミール、グロゼイユ、クレマチス、アイビーの順に絡めれば、その姿は、さしずめ花のティアラといった趣です。持てばブーケとして、置けば卓上飾りとして楽しめるのも花冠の魅力でありましょう。

 

そういえば、花冠は英語でカローラといいますが、日本の大衆車に同様の名前がありました。花冠が古代ローマから人々にとって身近な存在だったので、そう名付けられたのかもしれません。初期のエンブレムはCの文字の上に3つの花、花冠のデザインでした。(2018.7) 

 

 

18-08.jpg

【ヒマワリのブーケ】

 

俳句でいう季語のように、ブーケにおいてもその季節に相応しい花、誰もがその季節を感じる花というのがあって、夏といえば、ヒマワリもそのひとつです。漢字では向日葵、日回と書き、外国語や学名でも太陽と関連しているように、太陽の眩しい季節が良く似合う花でありましょう。

 

もっとも、ヒマワリはキク科の花で、暑い時期ですと器の水が濁って茎が腐りやすくなるため、水替えの手間が増えますから、わざわざブーケにするまでもないと考えたくなります。ところが、最近の切花向けのヒマワリは色や形も豊富で、束ねたくなる品種も少なくありません。

 

写真は「ホワイトナイト」という新品種で、少し白を感じるこのヒマワリは、西洋潅木の若い果実と良く合います。とても涼しげで、もう少し生産量が安定したら、レッスンのプログラムに加わえて、皆さんにも束ねていただきたいものです。(2018.8)

 

 

18-09.jpg

【私の花器コレクション・9】

 

この黒いモノリス型の花器は、石神照美さんの作品です。高さは15センチほどで使いやすく、この無機質な陶の質感は花の美しさを引き出します。また、何も飾らなければ、曖昧な壁として空間にこっそり佇むのも石神さんならではです。

 

石神さんといえば、小さな白い家や塔が並ぶ、パースペクティブな展示があります。それは例えるなら、ヴィム・ヴェンダースの映画「ベルリン・天使の詩」の天使のごとく、陶の街を俯瞰しながら優しく見守るという仕掛けです。

 

もっとも、そんな事を述べていたら、この夏、石神さんの個展にそのヴェンダース監督が訪れて、彼女の花器を手にしたというドイツの土産話が届きました。なるほど、先の映画に習えば、きっと石神さんも、かつては天使だったにちがいありません。(2018.9)

 

 

18-10.jpg

【ブーケ・サファリについて】

 

この写真は、つい最近仕上げた花嫁のためのブーケです。依頼では、ススキの仲間であるパンパスグラスを主役に、スワッグとして残せる事が条件でしたから、それならばと、長く楽しめて美しく乾燥する花束、ブーケ・サファリとして仕上げました。

 

もとより、フランスの花屋で1990年代に一斉を風靡したこのスタイルは、南アフリカの土着的な花を取り入れるのが特色です。日持ちがするので、当時はどちらかといえば、店先に並ぶ作り置きのブーケといった印象でしたが、近ごろは、壁飾りにもなるブーケとして見直されてきた事は、皆さんも良くご存知でありましょう。

 

ちなみに、サファリとはスワヒリ語で「長い旅」というほどの意味ですから、この一見すると風変わりに見える花束は、二人の門出をより後押ししたにちがいありません。(2018.10)

 

 

18-11.jpg

【ローズヒップのリース】

 

ローズヒップとはバラの果実のことで、ヒップそのものが「ノイバラの果実」という古い英語から派生した単語です。ドッグローズやハマナスなど、野生のバラ、とくに一重咲きのバラに多く見られます。

 

その赤い果実は、プリニウスの時代から、薬用や美容、あるいは食用として私たちは恩恵を受けてきましたが、今日の花屋においては、リース作りの素材としても欠かせない存在です。

 

この写真のように、さまざまな種類のローズヒップで仕上げたリースは、直径25センチほどで、おひとつ、¥4,320。昨年から作り始めたこのリースは、晩秋から近づくクリスマスまで、季節の移ろいを感じながら楽しめます。(2018.11)

 

 

18-12.jpg

【ユーカリの蕾】

 

オセアニアが生んだ特異な植物のユーカリの旬は11月からクリスマス頃です。その語源が「良い蕾」というほどの意味で、蕾はがくと花弁が合着し蓋状になっていて果実のようにも見えます。

 

これが、花屋にとっても「良い蕾」で、ブーケやリースのアクセントになるのはいうまでもありません。たとば、この写真のように、針葉樹と束ねれば、緑のブーケ、あるいはスワッグとして大いに楽しめるのです。

 

さて、お陰様でミニ大通りに根を付けて11年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 

えっ、6月から8月まで日曜日も休みにしたのは、自転車に乗るためでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2018,12)

2017-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2017

17-02.jpg

【私の花器コレクション・1】

 

パリの花屋、クリスチャン・トルチュのために、イギリスのデザイナー、ジェームス・ヒーリーが1995年に発表した花器が「カナル」です。その名の通り、特徴的な長さと、幅の狭さは運河を連想させます。伝統的な屋根葺きの技術を応用した、この現代の亜鉛バケツは扱いが容易で、私のお気に入り。

 

サイズも様々あって、縦型のものはまるで、キューブリックの名高い映画「2001年宇宙の旅」に出てくるモノリスのような存在感があります。もっとも、この写真の、私が20年ほど愛用しているものは、お客様からのパリ土産で、横型の一番小さいサイズなのですが、今でも古さを感じさせません。

 

結局、良い花器というのは、質感とデザインに優れている事は申すまでもなく、長く使い続けられる事なのでありましょう。ちなみに、この花器をデザインしたヒーリーはその後、香水ブランドを立ち上げ、現在は香水デザイナーとして日本でもお馴染みです。(2017.2)

 

 

17-03.jpg

【私の花器コレクション・2】

 

この21本の試験管が連なった「四月の花器」は、パリを拠点に活動する二人組、ツェツェ・アソシエのデビュー作であり、代表作です。「四月」の名の通り、花や枝、葉を自由気ままに飾るだけで、蝶々が舞うような雰囲気に仕上がります。

 

皆さんもご記憶にあるように、クリスチャン・トルチュがカンヌ映画祭の晩餐会で使用した事で、この花器は世界中で知られるようになったわけですが、なるほど、飾る場所を選ばない、というのもこの花器の魅力でありましょう。

 

写真のものは、もう20年以上使っているもので、メッキが剥がれて錆ついてますが、その経年劣化は味わい深く、花をより生き生き見せてくれています。それは、一つの花器を長く愛用してきた事へのご褒美なのかもしれません。(2017.3)

 

 

 

17-04.jpg

【私の花器コレクション・3】

 

フィンランドの建築家、アルヴァ・アールトが1937年のパリ万国博の為にデザインしたガラス花器が、この「サヴォイ・ベース」です。波を意味するアールトの名のとおりのその曲線は、80年経っても古さを感じさせません。

 

MOMAのパーマネントコレクションとして、現在でも、製造販売が続いていて、色や大きさも多様にあります。サイズを問わず、不規則な四つの窪みに花がきっちりと収まりますから、飾りやすいというのもこの花器のもう一つの魅力です。

 

ちなみに、これまで紹介した花器は模倣品が多く出回っているのに対して、このサヴォイ・べースの模倣品はみかけない気がします。きっと、あまりにも世界で有名なフラワーベースだからなのでしょう。(2017.4) 

 

 

 

17-05.jpg

【私の花器コレクション・4】

 

今から20年ほど前、当時の店近くのインテリアショップで購入したのがこのアノニマスな花器です。ちょうどセール品で、残っていた二つを衝動買いしましたからとても安価だっと思います。

 

高さが30センチ、素材はテラコッタでラフに色が塗られていますが、その自然な仕上がりは飾る場所や花を選びません。また、司教の僧服の袖のごとく下が膨らんでいて、こういった形は花を飾りやすいと言う事を知ったのもこの花器と出会ったからです。

 

旬の枝や花を仕入れた時、少し背の高いブーケを束ねた時、このアノニマスな花器は今でも重宝しています。時おり、譲って欲しいといわれてはお断りしておりますが、手に入るのであれば販売したいと思うほど使いやすいのです。(2017.5)

 

 

17-06.jpg

【私の花器コレクション・5】

 

西洋料理にナイフとフォークを広め、フランス菓子にマカロンを伝えたのは、その昔、フィレンツェを支配したイタリアの名門貴族メディチ家ですが、この写真にあるような花器を庭にもたらしたのもメディチ家です。メディチ花器と呼ばれています。

 

何でも、その形は保有していた古代ギリシャの大理石製花器に由来しているようで、王妃マリー・デ・メディチが造成したパリのリュクサンブール公園ではお馴染みの花器です。この公園を舞台にした、エリック・ロメールの映画「パリのランデブー」でも美しく登場していました。

 

現在、メディチ花器は多くの複製品が作られていて、私も白い鉄製のものを使っています。たしかに、その古典過ぎるデザインは場所を選びますが、店内に庭の雰囲気を醸し出す花器として、ロメール好きとして、これは持っておきたい花器なのです。(2017.6)

 

 

17-07.jpg

【私の花器コレクション・6】

 

三つの穴が空いた、ラグビーボールを一回り小さくしたほどの吹きガラスに、花や枝葉を挿して天井から吊り下げて使う「なまけものの花器」は「四月の花器」と同じ、ツェツェ・アソシエがデザインしたものです。

 

その名は、生涯のほとんどを樹にぶら下がって過ごす動物ナマケモノに由来します。ツェツェによれば、この花器はナマケモノのように葉っぱが大好きなようで、なるほど、緑を主体に少し大ぶりに飾りますと、小さな空間に森の佇まいが出来上がるというわけです。

 

今から10年前、現在の場所に移る時、真っ先に思いついたのが、作業テーブルの上にこの花器を吊り下げる事でした。以来、「なまけものの花器」は店の一番高い場所から、お客様と私を見守っています。(2017.7)

 

 

17-08.jpg

【私の花器コレクション・7】

 

フランスのセラミスト、ジョルジュ・ジューヴを知るきっかけにもなったこの黒いセラミックの花器は、山本アッシュさんの作品で、2011年に開かれた彼の個展で購入しました。たしか作品名は「marumero」だったと記憶しています。

 

もっとも、一般に黒い花器というのは存在感が強すぎる事から、花屋はとかく敬遠するものですが、この金属のような鈍い光と重量感、そして、完全でありながらも不完全でどこか有機的な形をしたこの花器と出会った時、そんな迷いは一瞬で無くなりました。

 

また、口径が四センチ、高さが三十二センチという花器の大きさは使いやすく魅力的で、バラ、アジサイ、ダリア、アマリリス、ユーチャリスなどを現代的に美しく飾る事ができます。(2017.8)

 

 

 

17-09.jpg

【私の花器コレクション・8】

 

このメディチ花器はこの夏、古くからのお客様から譲っていただいた私の最新コレクションです。高さが55センチ、幅が35センチ、大人一人がやっと持てる重さで、人工大理石で出来ています。

 

ご覧のように、直径が手のひらより大きいアジサイもたっぷりと飾れる大きさで、嫌味のないレリーフ模様に使い込まれた質感が味わい深く素晴らしい限りです。今では店内に古くからあったかのごとく、すっかり馴染んでおります。

 

これからが旬の、大振りのダリアや実り豊かな枝葉などを飾る上で重宝するのは間違いありません。また、同じものがもう一つありますから、店の入口に常緑樹を対に飾ってみるのも素敵でありましょう。大切に使い続けたいと思います。(2017.9)

 

 

17-10.jpg

【冬仕度のリース】

 

リースは乾燥した後も季節を問わず飾って楽しむ事ができますが、ミモザは早春、トケイソウは初夏、といった具合に、その種類によって作る時季が限られます。この新作のリースもまた、深まる秋から雪が降る頃の限定品です。

 

春に植えて程よく成長した2種類の白妙菊に、オーストラリアから届いたユーカリの蕾付き枝葉を、環状にしたサンキライの土台に絡めています。冬の始まりを思わせる美しい銀葉から冬支度のリースと名付けました。

 

写真のものは直径約50センチで、おひとつ、¥10,800。直径約25センチは、おひとつ、¥4,320。秋冬を通して楽しむ事ができますが、もとより、クリスマスの撮影用として誕生したものですから、クリスマスのリースとして飾っても素敵です。(2017.10) 

 

 

17-11.jpg

【モミのツリー】

 

アンデルセンの童話「モミの木」にあるように、西洋でクリスマスといえば、森から切り出したモミの木を室内に飾ることが一般的ですが、最近は写真のようなモミのツリーというのも見

かけるようになりました。

 

まるでドイツの北バイエルン地方に伝わる精霊フィングストを思い出すこの緑の飾りは、生命力を表す新鮮なモミの枝葉を逆さにしながら、木の棒を軸にピラミッド状に麻紐を用いて束ねて仕上げていきます。すなわち、これもブーケの一種というわけです。

 

モミのツリーは高さが40センチほどでおひとつ、¥7,560。もっとも、中世からクリスマスツリーはキリスト教における三位一体の象徴でもりますから、このように三角形のもの飾るという事が重要になります。(2017.11)

 

 

17-12.jpg

【真鍮のトレー】

 

年末の定番品、ヒヤシンスの鉢植えと球根型のろうそくに適する鉢皿や燭台として出来上がったのがこの真鍮のトレーです。

 

製作を依頼したのは真鍮の専門家、ヒウラユカさんで、どれひとつとして同じものがないのも魅力的。素敵に仕上げていただきました。スクエア形がおひとつ、¥2,160から。遊び心あるドーナツ形はおひとつ¥6,480。

 

さて、お蔭様でミニ大通りに根を付けて10年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

えっ、このトレー以外にある10周年記念のオリジナル商品の発表は来年になったんでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2017.12)

2016-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2016

16-02.jpg

【ミモザのスワッグ】

 

どういうものか、私はミモザが文句なしに大好きで、春が近づくこの時期になりますと、迷う事なく手に取ってしまいます。思いつくままに、その理由をあげるとするならば、まず、ヤドリギやスズランなどがそうであるように、市場に並ぶのが一瞬で、旬をはっきりと感じる花だからです。

 

それからもう一つ、銀色がかった葉と鮮やかな金色の房とのコントラストに、心が躍ってしまいます。前にも述べましたが、雪景色の中でしばらく過ごしておりますと、この花色がまるで南仏の太陽のごとく、眩しく見えるというわけです。

 

そんな北国に、このミモザのスワッグは、いわば春を告げる壁飾り。お互い大木で、原産地も同じオーストラリアであるユーカリと螺旋状に束ねて仕上がります。長さは50センチほどで、おひとつ、¥5,400。リースとはまた違った楽しみ方でもありましょう。(2016.2)

 

 

16-03.jpg

【私のブーケ作り】

 

今からちょうど25年前、ブーケ作りを始めた頃は、形やデザインに重きを置いておりましたが、多分、レッスンがきっかけだと思うのですが、いつの頃からか、料理を作るように、束ねる時は手際よく、準備はしっかりと、季節感や素材の組み合わせを意識するようになりました。

 

考えてみれば、旬を楽しむブーケも料理も、味わえば、そのもの自体は無くなってしまいますが、心には残るものなのです。料理は素材65%、調理25%、感性10%、といったのは料理人のアラン・デュカスですが、私が作りたいブーケにも、この言葉がぴたりと一致します。

 

たとえば、写真のブーケの場合。素材は春の花と葉と枝で、調理、すなわち技術はスパイラルに束ねる事です。そして、感性は季節を感じるアクセントを意味します。この場合、芽吹いたシモツケの枝と若草色のスノーボールがあるからこそ、春の訪れが感じられるブーケが作れるわけです。(2016.3)

 

 

16-04.jpg

【アジアンタムについて】

 

ギリシア語で「乾いた」というほどの意味に由来するアジアンタムは、春に鉢植えとして出回りますから、この時期には欠かせない存在です。花飾りとしてはもちろんの事、この写真のように、ブーケに加えますと、繊細で明るい緑色が、長い冬から抜け出した私たちの気分を明るくしてくれます。

 

もっとも、プリニウスの博物誌によれば、アジアンタムは水中に投げ入れても常にその葉は乾いたままだといっているうように、このシダ植物は、切って使いますと数時間で枯れてしまいます。したがって、少し手間ではありますが、必ず根を付けたままで束ねることが欠かせません。

 

そこで、アジアンタムの鉢植えを仕入れたら、まず鉢から抜いて、土をほぐして水の汚れがなくなるまで根洗いを行います。毎年、この下準備が始まりますと、スズランの日や母の日が近づいてきた事を実感するわけです。

(2016.4)

 

 

16-05.jpg

【キソケイについて】

 

漢字で黄素馨と書き、英語でイエロージャスミンと呼ばれるキソケイは、ジャスミンの仲間でヒマラヤが原産です。仄かな香りがする常緑の低木として、花市場では、春の終わりから夏に出回りますが、5月頃には、花が咲いたものが入荷して、花屋を喜ばせます。

 

この写真のように、その小さな黄色は、華やかで優しい雰囲気のバラとの相性が良く、淡いピンク色を引き立ててくれますし、旬のシャクヤクやスイートピーと束ねても素敵です。また、手に入りやすく、使いやすい花材でもあります。

 

キソケイといえば、数年前の5月下旬、銀閣寺を目指し、傘をさして哲学の道を歩いていたところ、覚えのある香りが漂ってきました。視線を横にすると、川面に垂れたこの黄色が、雨の京都を訪れた私を迎えてくれたのです。それは私の住む札幌では知る事が出来ない、初夏の美しい光景でした。(2016.5)

 

 

16-06.jpg

【アネモネあれこれ】

 

アネモネといえば、冬の花屋に並ぶ、赤、青、紫、白といった色の花を思い浮かべますが、実のところ、アネモネにはあれこれ仲間がいて、四季を通して見る事ができます。

 

たとえば、その黄色で春を知らせる福寿草や、ギリシア神話に美少年として登場する赤花のアドニス属も、名前は違えどアネモネです。また、夏から秋の庭を飾るヴァージニアや、秋明菊もその学名はアネモネであることはあまり知られておりません。確かに、葉の感じは異なり、背丈のある花姿ではありますが、花だけを注目しますと、アネモネである事に納得致します。

 

そして、この写真のアネモネ・カナデンシス。カナデンシスとはカナダ原産というほどの意味で、初夏に咲く可憐なアネモネになります。夏至が近づく頃、森から摘み取ったように、小さなブーケにして楽しむのが私のお気に入りです。(2016.6)

 

 

16-07.jpg

【ローズマリーについて】

 

ラテン語で「海のしずく」というほどの意味があるように、ローズマリーは波の音が聞こえる範囲で良く育つ常緑の小低木です。プリニウスの時代には既に冠婚葬祭で用いられていたようですから、この植物は昔から私たちにとって身近な存在なのかもしれません。

 

たとえば現代でも、薬草として民間療法や料理に使う事もありますし、香水の起源でもあるハンガリー水といえば、この植物の蒸留酒です。また、ヤナーチェクの歌劇「イエヌーファ」の舞台演出に、ローズマリーの鉢植え

は欠かせない存在でありましょう。

 

もっとも、この写真のように、ローズマリーはリースとしても楽しめます。直径が35センチほどの野趣溢れる仕上がりは、壁掛けはもとより、卓上に飾っても素敵です。おひとつ、¥6,480。受注製作になります。(2016.7)

 

 

16-08.jpg

【洋種ヤマゴボウについて】

 

白と緑のブーケというのは面白いもので、初夏の頃だと涼しく感じていたものが、暑さが増すに連れると大して感じなくなる事があります。そんな時に重宝するのが、洋種ヤマゴボウの存在です。この写真でお気づきのとおり、マゼンタに近い茎の色がどういうわけかブーケの印象をより涼しく見せてくれます。

 

とりわけ、その小さな白い花序は垂れ下がっているのも大変よろしく、スカビオサや人参の花といった草花はもちろんの事、アジサイとも美しく調和するのは嬉しい限りですし、深いボルドー色のダリアなんぞと束ねますと、夏の洗練されたブーケも出来上がります。

 

別名、アメリカヤマゴボウともいうように、この花は北アメリカ原産の多年草で、明治時代に日本に伝わった帰化植物です。在来種である食用のヤマゴボウとは別物でその根は食べられません。区別するために洋種と付きます。ちなみに、食用の方はキク科でこちらはヤマゴボウ科です。(2016.8)

 

 

16-09.jpg

【コスモスについて】

 

コスモスといえば、秋の七草のように万葉の時代から野原に咲いていると想像しがちですが、実際は違っていて、この花はメキシコ原産の植物です。明治後期に伝わった日本では、大正時代にはハイカラな花として流行し、今では秋の花として、私たちをノスタルジックな情緒へと誘い出します。

 

この写真のように、パニカムやススキといった禾本科植物を加えたブーケは満月と一緒に楽しめるこの季節の定番です。もっとも、キク科で頭状花序のコスモスを束ねる時には、あえて花の高さを揃えない方がより自然な印象に仕上がるというのはここだけの話。

 

ちなみに、名前の由来である、ギリシア語のコスモス・ビピンナツスには「秩序ある美しい飾り」というほどの意味があります。どうやら、花ではなく羽根状の葉姿の事を指しているようで、名付けたスペインの先人とは何だか友達になれそう。(2016.9)

 

 

16-10.jpg

【アナベルのリース】

 

アメリカノリノキの園芸種であるアナベルは、以前この欄で述べたように、乾燥した花姿も綺麗ですから、リースとしても楽しめます。壁掛けにしたとしても、卓上に飾ったとしても、その移ろいゆく秋の緑が、部屋の中を華やかに演出してくれる事はいうまでもありません。

 

この写真のように、環状にしたサンキライの枝を土台として、アナベルを敷き詰めるように絡めれば、自然な雰囲気のリースが出来上がります。とりわけ、近年出回り始めた八重咲きの品種、ヘイズスターバーストだけで作りますと、その星形の小さな装飾花が目を惹く事でありましょう。

 

アナベルのリースは直径が約30センチほどで、おひとつ、¥4,320。もとより、この花はアジサイの仲間として北米の野山に自生していたわけですから、リースの形はあまり整えず、歪んだドーナツ状に仕上げた方が、その魅力はより一層引き出されます。(2016.10) 

 

 

16-11.jpg

【クリスマスのリースその2】

 

クリスマスは、太陽を励ます生命力の祝祭として、もともとヨーロッパにあった冬至祭が発展したものですから、そのリースは冬でも美しい常緑の植物で作る事がやはり重要です。むろん、毎年私が作っているモミを使ったクリスマスのリースもその定義によりますが、今年はもう一つ、新しいリースを作りました。

 

環状にしたサンキライの枝を土台として、コニファー、スキミア、野イバラの順に絡めて仕上げたのが、クリスマスのリースその2です。スキミアはモミと並んで、イギリスではクリスマスを象徴する植物ですが、その臙脂色の蕾は、雪の中で一際引き立つ事はいうまでもありません。

 

ご覧の直径約50センチ(写真)のものがおひとつ、¥18,900。直径約30センチはおひとつ、¥10,800。ご予約のみでの販売です。扉飾りだけではなく、卓上飾りとしてもお楽しみいただけます。(2016.11)

 

 

16-12.jpg

【インスタグラムについて】

 

皆さんも良くご存知の通り、昨年の夏から、写真共有サービスのインスタグラムを始めました。きっかけは、レッスン内容をお知らせするのに便利だと、知人に勧められたからですが、写真好きの私がすぐに魅せられしまった事は申すまでもありません。

 

洋の東西を問わず、ひとつのブーケについて、会話ができるというのも面白さの一つで、花屋にとっては21世紀のショーウインドー。1日1枚、投稿しておりますので、これからも引き続きお楽しみください。

 

さて、おかげさまで、ミニ大通りに根を付けて9年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

えっ、そのインスタグラムで、憧れの花屋、クリスチャン・トルチュからの唯一のコメントが、花以外の事だったでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2016.12)