ミニ大通の窓辺から 2025
【アボンヌモンについて】
アボンヌモンとは、フランス語でサブスクリプションというほどの意味で、店舗や事務所といった場所への花飾りの定期契約のことです。ご依頼を受ければ、まず下見をして、その空間でしか出来ない花飾りをご提案いたします。
たとえば、こちらのリストランテ/バーでは、その天井高を生かして、以前この欄でもご紹介したツェツェの「なまけものの花器」に花を飾ることを思いつきました。実際に食事をしながら閃いた花飾りのアイデアです。
過日、その考えを歌にしたので、ちょっと詠んでみましょうか。新年ですし。(2025.1)
肘掛け椅子(フォトゥイユ)に腰おろす仰ぎみれば緑を纏った「なまけもの」
【私の花器コレクション・13】
最近よく見かける「ディアボロ」という名の花器を知ったのは、今から25年ほど前のことで、四角い形のガラス器の中央に、大道芸が使う空中独楽のような窪みが花留めとなった花器です。奥行きもあって、花を投げ入れることも束を飾ることもできます。
デザインしたのはプロダクトデザイナーのマリアンヌ・ゲタンです。彼女は、当時パリにあった花屋「クリスチャン・トルチュ」のために、様々な花器を展開していますが、この「ディアボロ」は人気が高く、数年前に再販されて、現在でも手に入れることができます。
ちなみに、この写真左の透明な方は、スペインのメーカーから2010年頃に販売されたものですが、程なく販売中止になりました。その後、「ディアボロ」にはクリスチャン・トルチュのロゴが入ったのもこの一件があったからかもしれません。(2025.2)
【近ごろのチューリップ】
春の花を代表するチューリップは花姿や色も豊富で、私たちの偏愛ぶりは17世紀から続いています。花屋において、最も品種が多く出回るのが3月です。彩度の低い品種が増えているのが近ごろの傾向でしょうか。
完全なるベージュ色のラ・ベルエポック、八重でフリンジ咲きのピンクマジック、紫と茶が混ざり合うウィンダム、その名の通り銅を連想させるコッパーイメージ、暗さの中に華やかさ漂うブラックヒーローという具合。
雪解けとともに、色とりどりのチューリップだけを束ねるレッスンを楽しんだり、アソートをご提案することにしたのも、近ごろのチューリップはこれまで以上に魅力的な品種が多いからです。手にすることで心が豊かになります。(2025.3)
【プライベートレッスンについて】
プライベートレッスンは今年から新しく加えたプログラムです。他のレッスンとの大きな違いは、その内容や受講する日時をあらかじめご相談して、ご希望に沿って行うことにあります。
たとえば、ブーケ・ド・マリエと呼ばれる、花嫁が持つブーケの作り方を学びたいとか、もっと基礎からスパイラルブーケに取り組みたいなど、より深く楽しむブーケ作りは個別対応ならではです実例を見てみましょう。
こちらの方は、ブーケ・ド・マリエの年間プログラムをご希望されています。前回はチューリップを現代風に束ねていただきました。フランスの花様式に明るければ、この葉使いに、モニク・ゴーチェ先生を思い出すかもしれません。(2025.4)
【近ごろのカーネーション】
近ごろ、その印象が変わった花があります。カーネーションです。この写真のように、彩度の低い品種が増えていて、市場で見かけると思わず手に取ってしまいます。昨年からは、定期注文の花飾りにも使うようになりました。
また、この色目だとブーケにしても魅力的です。今月は初めてレッスンのプログラムにも加えてみました。茎が折れやすいので、束ねる場合は少し注意が必要ですが、ライラックや初夏の草花とは相性が良いかもしれません。
ちなみに、日本でカーネーションと呼ばれるようになったのは戦後のことで、それまではアンジャベルとかセキチクという名が一般的だったといいます。母の日にカーネションを贈るというアメリカ文化が伝わって、この呼び方が定着したのかもしれません。(2025.5)
【ドウダンツツジについて、その2】
今から2年前、この欄で「ドウダンツツジについて」と題していろいろと述べましたが、ひとつ大きな間違いがあることに昨年気がつきました。それは、花屋がドウダンツツジとして販売している多くは、その近縁種のアブラツツジだということです。
ドウダンツツジは花が咲くのと葉が芽吹くのはほぼ同時ですが、アブラツツジは葉が出てから花が咲きます。そして、この写真のように、そのベル状の白花はドウダンツツツジほど多くありません。枝ぶりも何やら涼しげです。
以前、お客様がこの枝を指して「家の庭にあるドウダンツツジと雰囲気が異なる」というご質問を受けることがありましたが、今後は迷わずお答えすることができそうです。(2025.6)