2010-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2010

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【マグノリアのボール】

 

フランスのインテリア雑誌や家具屋の目録をパラパラめくっていると、苔や月桂樹の葉、レンズ豆などで出来たボール型のオブジェがしばしば登場することがあります。その中で私が膝を打ってすぐに作りたい、と思ったのがこのマグノリアのボールです。

 

ポリスチレンの土台に葉を枝で刺して大胆に作られた姿を初めて見た時、まるで森の中から枝葉を拾ってきて、さっと仕上げたような印象を受けました。すなわち、良いブーケや花飾りがそうであるように、見た目がさりげなく自然であることは、オブジェにおいても人を魅了するというわけです。

 

マグノリアのボールはおひとつ、直径20センチ(写真)が¥3,675、直径15センチが¥2,100。そういえば、ユネスコ本部やプラネタリウムなど、パリの街では大きな球体が目に付きます。フランス人は球体が好きなのかなあ。(2010.1)

 

 

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【スノードロップの鉢植え】

 

自宅用として、あるいはちょっとした贈り物として、店に並ぶ季節の小さな鉢植え。今月はスノードロップの登場です。透明なガラス器に3球のグループで植えて土の表面を苔で覆い、まだ雪が残る早春の庭といった雰囲気で仕上げています。

 

もっとも、神話の世界でスノードロップは冬から春への転換の象徴として、天使が雪のひとひらを掴んで息を吹き掛け誕生した花でありましたから、この鉢植えは窓辺に飾って、雪景色とともに眺めるのが一番でありましょう。おひとつ、¥1,050。

 

さて、2月2日はキャンドルマス。冬の終わりを告げるクリスマス最後のカトリックのお祭りですが、私が以前から特別な関心をいだいているのは、たくさんのろうそくの灯だけではありません。教会の祭壇にスノードロップを撒き散らす伝統的な花飾りの習慣です。やってみたい!(2010.2)

 

 

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【花のポストカード】

 

ミニ大通りの並木と対話しながら、店に置く花や枝葉の種類を変えているように、壁際に並ぶ花のポストカードも、撮りためているフィルム写真の中から、ブーケや鉢植え、花飾りなどを季節に合わせて選んでおります。

 

これらの写真は、後で参考にするために10年ほど前から撮っている、いわば私の日記みたいなもの。花は料理でいうルセットのような記録を残しても、再び同じものができるとは限りませんから、常に写真で過去の良い感覚を確認しているというわけです。

 

もっとも、花のポストカードは「ああ、この人が作る春のブーケはチューリップやラナンキュラスをスノーボールと組み合わせる、17世紀のフランドルの画家たちが好みそうな雰囲気だわ」といった花選びの見本にもなりましょう。1枚150円。ちなみにこの写真は2001年の春のブーケから。(2010.3) 

 

 

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【ブーケの宅配】

 

「30cm四方のダンボール箱に、ゼリーで保水した花束を器に飾り、丸めた新聞紙を薄葉紙でくるんだボール状のクッションを箱の中に敷き詰めて固定。天地無用と冷蔵のシールを貼って準備完了!」とまあこんな具合に、札幌市外に花をお届けする場合は器付ブーケを宅配便で発送しております。

 

考えてみれば、スパイラルブーケはもとより花を持ち運びやすくするために生まれた花束ですから、移動で花が崩れるという心配はありません。また、器に入れることで花束を安定した状態で運べますから、器付ブーケが宅配にはぴったりだというわけです。

 

もっとも、気に入ったブーケだからこそ、たとえ遠くであっても届けてほしいということでありますから、いつも通りのものを発送するということが大切でありましょう。なお、花の鮮度を考えて、宅配は翌日到着地域に限ります。予めご了承ください。(2010.4)

 

 

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【シャクヤクのブーケ】

 

シャクヤクはフランスで「聖母のバラ」、イタリアやスペインで「山のバラ」と呼ばれるように、バラのように美しい花として5月の私たちを幸せにしてくれますが、この花をブーケにするとなれば、フランスの花屋がしあわせの印と呼ぶ、少し開きかけの状態で束ねたいところ。

 

そして、伝統的にシレーヌやアルケミラ・モリスと合わせたり、現代的にラズベリーの枝葉を添えてみたり、写真のようにキソケイで庭から摘んだように仕上げれば、その豪華な花姿が良くひき立つというもの。

 

もっとも、最近は切り花の季節感が失われてきていて輸入のシャクヤクが冬に出回ることもありますが、たとえば、毎年5月に開催される自転車ロードレース「ジロ・ディ・イタリア」でのシモーニやクネゴのように、この花もやはり5月の光が良く似合います。(2010.5)

 

 

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【夏のミニ大通り】

 

ミニ大通りは、植物園から道路を挟んで西におよそ900mほどの並木道です。中央分離帯が幅のある遊歩道になっていて、春は桜が楽しめたりしますが、店のある西17丁目には桜がありません。しかし、クルミやドングリ、姫リンゴ、サクランボといった果樹があって、夏から秋は賑やかな並木となります。

 

一般に札幌の街路樹は、その気候風土から強選定をするため、高さが抑えられ枝振りも暴れ、夏でも緑が少ないといわれますが、ミニ大通りの樹木は大きく育っているため、店の前の建物が隠れるほど緑の密度が高く、夏は森の中といったところ。

 

6月ともなれば、店のドアを開け放し、京都は東山のとある宿のごとく、木々の葉音や鳥の鳴き声を店のBGMにするのが私の夏の楽しみです。ちょっと自慢をすれば、風が抜ける店内でブーケが作られる花屋はそんなにないと思うんだなあ。(2010.6)

 

 

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【アジサイを夏のリビングに】

 

以前はオランダから手に入れるしかなかった特別に栽培されているアジサイも、最近は北海道でも作られるようになり、この季節に欠かせない存在になりました。考えてみれば、白やライム色のアジサイは隣家の庭でもそう見掛けませんから、これは夏の贅沢品というわけです。

 

ただ私は、最近流行の、アジサイをバラなんかと丸くまとめるロマンチックなブーケには何だか興味がありません。やはり写真のように、ミントやフランボワーズ、スモークグラスといった夏のアクセントに、その質感が調和するモルセラを加えたバロック風な仕上げが好ましいところ。

 

もっとも、アジサイを夏のリビングに飾れば、それだけで、ロワ-ル地方の宿にいるようなバカンス気分に浸れます。後はロゼワインを片手に、テレビのチャンネルをツール・ド・フランスに合わせたりしてね。(2010.7)

 

 

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【薔薇の香りを楽しんで】

 

花屋の薔薇といえば、香りが弱いという印象がありますが、夏の間はイングリッシュローズのように、香り豊かな品種の薔薇を楽しむことができます。

 

たとえば、象牙色のフェアー・ビアンカは、オールドローズやミルラの香りです。房咲きですから、ブーケはもちろんのこと、1枝を部屋に飾るだけでもロマンチックな気分に浸れます。

 

それから、シャクヤク咲きで牡丹色のイブピアッチェ。まるでローズガーデンに迷いこんだような強い香りがあります。写真のように、山ゴボウや、八重咲きのコスモス、フランボワーズなんかと田舎風に束ねれば、もし夏のピクニックにブーケを持って行くことになった時にも、ぴったりでありましょう。

 

もとより、薔薇は西アジアの暑い地域が原産の花ですから、夏こそ薔薇の香りを楽しんで。(2010.8)

 

 

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【シンフォリカルポス】

 

舌を噛みそうな名前のシンフォリカルポスは秋のブーケや花飾りに、ちょっとした田舎の趣を与えてくれます。考えてみれば、花屋に出回るこういった愛らしい小さな白い実を持つものは他にハゼやペルネチアの鉢植えぐらいかもしれません。

 

もっとも、この白い実はバラやリシアンサスと喜んで混ざり合ってくれますが、とりわけ、くすんだ緑色のアジサイと束ねますと秋の田舎が感じられます。ちょっとだけ束ねて、自宅用、あるいは秋の手土産としても素敵ですから、きっといつの日かこの組み合わせが流行すると信じて、毎年9月には写真のように店内に並んでいるというわけです。

 

シンフォリカルポスといえば、岩見沢市の宝水ワイナリーからローズガーデンに抜ける道路沿いの田舎で、秋の白い光を浴びている姿を目にすることができます。そう、この道は私の秋のサイクリングコース!(2010.9)

 

 

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【秋に作る蘭の鉢植え】

 

たとえば、ファレノプシスにせよ、パフィオ・ペディルムにせよ、バンダにせよ、蘭と聞くと、皆さんの中には、季節を問わずホテルやちょっと洒落た感じの現代風の花屋に並んだ、コスモポリタンな花と思われる方も多いかも知れません。

 

あるいは、19世紀フランスの作家ユイスマンスが小説に書いているように、暖房のガラスの宮殿に住む高貴な花、造花を真似た自然な花という印象もありましょう。

 

私もそんなイメージがありましたから、写真のような蘭の鉢植えをパリの花屋で知った時、ずいぶん感心しました。ネコヤナギの枝、マグノリアの葉を加えるだけで、こんな素敵なものができるなんてね!

 

秋に作る蘭の鉢植えはおひとつ¥4,200。ネコヤナギとマグノリアが出回る10月の終わりに今年も登場します。(2010.10)

 

 

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【モミのガーランド】

 

申すまでもなく、クリスマスは12月25日だけを突然お祝いするわけではありません。シュトレンなんぞを少しずつ食べながら、気分を盛り上げていくものです。然れば、花屋も11月はリースやクランツを作るなど、クリスマスの準備が始まります。

 

私の準備はといいますと、良いヤドリギを探して、マグノリアのボールを用意して、ヒヤシンスの球根を集めて、そしてこのモミのガーランドを作るというわけです。モミの枝を手のひらほどに切り分けて、リトアニア産の細く目立たない麻紐で長さ70センチほどに束ねて仕上げます。

 

もっとも、これはアドヴェントを知らせる印でもありますから、1ヶ月ほど楽しめることも大切です。おひとつ、¥2,100。木蔦やイレックスが溢れ、ジュニパーの香りが漂い、店内が冬の森となる今月中旬に登場いたします。(2010.11)

 

 

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【クリスマスのリース】

 

静かなミニ大通りで店を構えて良かったことは、鳥の鳴き声を聞きながら花を束ねられるだけではありません。訪れた人とのゆったりとした会話の中から生まれる新しいアイデアがあります。

 

モミ、ネズ、ヒムロスギ、そして雪を冠ったような蕾のユーカリ・グロボラスをラフィアで束ねただけのクリスマス・リースもそんな時間に思い付きました。森の良い香りが楽しめて、いつものブーケと同様に凝った印象がないように仕上げます。直径20センチ。おひとつ、¥2,100。

 

さて、早いものでミニ大通りでブーケを作り始めて3年が経ちます。有り難うございました。来年も宜しくお願い致します。

 

えっ、このリースといい最近やっと世の中の人の嗜好や希望がわかってきたようですね!なんて、そんなこといいっこなしよ。(2010.12)