2020-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2020

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【ネコヤナギのリース】

 

ケルト語で「水辺に近い」というほどの意味があるヤナギの中で、銀白色に輝く花芽が特徴のネコヤナギは、ヒヤシンスやスイセンといった早春の花と束ねるのが定番ですが、この写真のようにリースにしても素敵です。

 

その作り方はいたって単純で、環状にしたサンキライの枝を土台にして、同じ方向に絡めて仕上げます。コツとしては、花芽の位置などはあまり気にしないことです。少し乱れた感じの方が美しく仕上がります。おひとつ、¥3,300。

 

ちなみに、ネコヤナギの花言葉は「自由」です。このリースのように、新しく作るものををどう仕上げるか。先人が考えた花の名前の語源や花言葉というのが、そのヒントになる時もあります。(2020.1) 

 

 

 

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【房アカシアの香り】

 

房アカシアが「ミモザ」と呼ばれるのは、19世紀、オーストラリアから西洋各地の庭園に導入された際、その羽状の葉が学名「ミモザ」のオジギソウに似ていたからで、花屋にはイタリア産が年明けから出回ります。

 

それは、同じ頃に国産の「ミモザ」として流通する銀葉アカシアとは違うわけです。南フランスで香料の原料として栽培されているように、こちらには強い香りがあります。また、長い葉は確かにオジキソウと間違えそうです。

 

そして、価格も3倍ほどしてしまいます。そうなると、リースやスワッグを作る場合、ユーカリなどを加えて安く済ませようとしがちですが、そんな事をしてしまえば、折角の房アカシアの香り、「ミモザ」の香りは台無しになってしまうのです。(2020.2)

 

 

 

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【開店祝いのブーケ】

 

花贈りのひとつに開店祝いがあります。その場合に重宝するのが器付ブーケです。葉を巻いたガラス器にブーケを飾るこの様式は、場所をとらず、選ばず、空間を華やかに演出してくれます。器付ですから、いただく側も花器を用意する必要がありまん。

 

もっとも、高さや大きさという点においては、給水性スポンジに生けたフラワーアレンジメントに比べるとこの器付ブーケは見劣りします。けれども、折角の真新しい空間において、贈られた花がその雰囲気に調和させる事も、花屋は考えなければならないのです。

 

だから、新しい始まりのお祝いに贈る花に、奇抜さや流行は必要ありません。目立ち過ぎず控えめに、その季節の花を贈る方が喜ばれる事を私は知っています。贈られた人の心の中に一番残るもの、それは季節感だからです。

(2020.3) 

 

 

 

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【母の日の花贈り】

 

たとえば、十字軍に加わったフランスのルイ9世が、母のために花をペルシアから持ち帰ったとか、戦後の日本に駐留していたアメリカ兵が母国に花を通信配達で贈ったというエピソードを思い出すと、人は平安を望む時、花に気持ちを近づける気がしています。

 

それは、花が日常を慈しむ心を取り戻してくれる、身近な装飾だからでしょう。もっとも、来月には母の日がありますが、少し窮屈な今年は、花を贈りたいと思っている方が多いのかもしれません。

 

この写真は、昨年束ねた母の日のブーケです。小さめのバラにサポナリアやオルラヤを合わせて田園風の優しい雰囲気に仕上げました。花贈りは、贈られた以上に贈る人の心も安らぐもの。そして、手に触れれば、心がさらに鎮まるものでもあります。(2020.4)

 

 

 

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【花のアイデア、ブーケの作り方】

 

先般、新型コロナウィルス禍における状況を考えて、レッスンを一定の間、休止いたしました。人との接触を減らす行為が感染拡大を抑えるためには重要ですし、何より、落ち着かない気持ちが続くばかりで、楽しくはありません。

 

むろん、オンラインで続けるという方法もありますが、当然、レッスンの質は下がりますし、花材を宅配する方の負担を増やしてしまいます。こんな時は、家の周りの自然に目を向けてみるなど、別な角度から花を楽しむ機会と捉えてみたいものです。

 

この度、簡単な花飾りやブーケ作りを、Instagram、IGTV、YouTubeで公開する事を始めました、作り方も説明しています。妄想するだけでも学ぶ事になるでしょう。秘密にしていた花のアイデア、ブーケの作り方です。(2020.5)

 

 

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【私の作業台】

 

長さ2メートル40センチ、奥行き92センチ、厚さ3センチ。私がいつも花を束ねている作業台の大きさです。ホームセンターで購入して13年が経ち、無塗装のシナ板はあちこち古びてきました。

 

経年劣化といえば、それまでですが、これは皆さんが何度もレッスンを受けてくださった証でもあります。先月から公開している動画で観られるように、窓から天板に差し込む光は、ハンマースホイの絵画のように美しく反射しているではありませんか。

 

ブーケ作りだけではなく、時には、麻のクロスを広げて宴の卓としても重宝している私の作業台。緊急事態宣言に伴い店舗は休業しておりましたが、今月からまたこの作業台が活気付くに違いありません。トケイソウのリースが出来上がるのも、もうすぐです。(2020.6)

 

 

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【花の動画について】

 

すでにご覧いただいた方も多いと思いますが、この5月から花の動画をYouTubeなどで公開しております。撮影、編集をお願いしているのは私の自転車仲間です。先の自粛期間中に、彼女が動画撮影の仕事もしている事を偶然知り、期せずして始まりました。

動画は、あたかも観る側が束ねているかのごとく、カメラは作る手元に焦点を当てています。作業工程をわかりやすく、花そのものが主役になる趣向です。また、必要最小限の字幕や的確な編集は、毎回、私好みに仕上がるのがありがたいところ。

これまで、トーマル峠や三国峠、上富良野町の未舗装路を一緒に走ってきた自転車仲間ゆえ、呼吸が合うのかもしれません。今後も季節ごとに撮影は続きますが、次の動画を一番楽しみにしているのは何を隠そうこの私です。

(2020.7)

 

 

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【ミルトの鉢植え】

 

ミルトは地中海地域に自生する常緑樹で、その葉や果実からはリキュールが作られたり、料理に使われるハーブでもあります。英語ではマートル、ドイツ語ではミルテと呼ばれ、シューマンの歌曲「ミルテの花」とはこの花のことです。日本では梅のような花姿から、銀梅花とも呼ばれます。

 

また、聖書やギリシア神話でもよく知られていて、古くから、結婚式には欠かせない縁起植物です。ミルトの花冠はティアラの原型でありますし、少し前に、メーガン妃が持ったブーケの中には王室の庭から詰んだミルトの枝が入っていたといいます。

 

そんなミルトの鉢植えがこの夏初めて入荷しました。札幌では、冬の間は室内に取り込む必要がありますが、花や果実は鉢のままでも楽しめます。そういえば、サルディーニャ島では毎年8月、ミルト祭りが催されますから、今年は店前でもお祭り気分。ミルト酒を炭酸水で割って乾杯です。(2020.8)

 

 

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【リシアンサスについて】

 

リシアンサスには、ユーストマ、テキサスブルーベル、プレーリージェンシャン、トルコ桔梗など様々な呼び方があります。ユーストマは現在の学名、テキサスブルーベルは、この花の自生地に由来、プレーリージェンシャンは、牧草地のリンドウの仲間というほどの意味です。

 

トルコ桔梗は、植物学者の牧野富太郎氏が「その呼び方は感心しない」と指摘したように、トルコとも桔梗とも関係がありません。でも、馴染み深い人も多いでしょう。そして、リシアンサスは、19世紀イギリスでつけられた旧学名で、花卉農家や花屋の多くが今でもそう呼んでいます。

 

ブーケにする場合は、ヴェンダースの映画「パリ、テキサス」に出てくる乾いた大地を思い出して、禾本科植物とともに田舎風に仕上げるのが定番です。ほら、ライ・クーダーの音色が聞こえてくるでしょう。(2020.9)

 

 

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【ハンギングバンチについて】

 

ハンギングバンチとは、スワッグの一種で、英語で「束を吊るす」というほどの意味です。近ごろ、私達がスワッグと呼んでいる壁飾りの多くは、イギリスの花屋がいうところの、ハンギングバンチを指します。

 

リースやガーランドのように作りこむ必要がなく、束ねるだけで気軽に楽しめることが、ハンギングバンチの魅力です。たとえば、この写真のように、アジサイ、ユーカリ、ダスティーミラーの組み合わせは、秋から冬へと向かう季節の移ろいを感じさせます。

 

もっとも、このハンギングバンチも、ブーケを作る要領で茎をスパイラル状に束ねて作りますと、壁に飾った時、結束の部分が浮から見ても美しく仕上がります。リボンを用意する必要がなくなるわけです。(2020.10)

 

 

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【WINTER20】

 

上段左、冬支度のリースは、2種類のダスティミラーとユーカリの組み合わせ。中央、クリスマスのリースは、モミとコニファーに、グロボラスの蕾がアクセント。右、ナンキンハゼのリースは長く楽しめる逸品です。

 

中段左、ヒヤシンスの鉢植えは、お正月に向けてゆっくりと開花します。中央、球根型のろうそくは、この写真の他に、昨年から特大も加わりました。右、ユーカリのリースは、4週類を絡めることがポイントです。

 

下段左、お正月のリースは、縁起植物の取り合わせ。中央、松飾りは、根引松ならではの趣があります。右、お正月の器付ブーケは、アマリリス、スイセン、金柑、お多福南天などを束ね、松葉を添えたバロック調の仕上がりです。青竹器に飾っています。(2020.11)

 

 

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【四つの灯り】

 

「四つの灯り」は2010年から続くアドベント期間の催事です。毎年12月の第1週、福井あゆみさんが作るキャンドルを扱う5店が集って、クリスマスにまつわる商品とともに展示販売しています。

 

今年は新型コロナウィルス禍の中、縮小しての開催となりました。キャンドルの灯りは、人の心も明るく温かくします。少しでも不安を忘れる事ができたとなれば幸いです。

 

さて、お陰様でミニ大通に根を付けて13年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 

えっ、キャンドルの販売といいながら、焼菓子やヤドリギが人気だったんでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2020.12)