2017-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から 2017

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【私の花器コレクション・1】

 

パリの花屋、クリスチャン・トルチュのために、イギリスのデザイナー、ジェームス・ヒーリーが1995年に発表した花器が「カナル」です。その名の通り、特徴的な長さと、幅の狭さは運河を連想させます。伝統的な屋根葺きの技術を応用した、この現代の亜鉛バケツは扱いが容易で、私のお気に入り。

 

サイズも様々あって、縦型のものはまるで、キューブリックの名高い映画「2001年宇宙の旅」に出てくるモノリスのような存在感があります。もっとも、この写真の、私が20年ほど愛用しているものは、お客様からのパリ土産で、横型の一番小さいサイズなのですが、今でも古さを感じさせません。

 

結局、良い花器というのは、質感とデザインに優れている事は申すまでもなく、長く使い続けられる事なのでありましょう。ちなみに、この花器をデザインしたヒーリーはその後、香水ブランドを立ち上げ、現在は香水デザイナーとして日本でもお馴染みです。(2017.2)

 

 

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【私の花器コレクション・2】

 

この21本の試験管が連なった「四月の花器」は、パリを拠点に活動する二人組、ツェツェ・アソシエのデビュー作であり、代表作です。「四月」の名の通り、花や枝、葉を自由気ままに飾るだけで、蝶々が舞うような雰囲気に仕上がります。

 

皆さんもご記憶にあるように、クリスチャン・トルチュがカンヌ映画祭の晩餐会で使用した事で、この花器は世界中で知られるようになったわけですが、なるほど、飾る場所を選ばない、というのもこの花器の魅力でありましょう。

 

写真のものは、もう20年以上使っているもので、メッキが剥がれて錆ついてますが、その経年劣化は味わい深く、花をより生き生き見せてくれています。それは、一つの花器を長く愛用してきた事へのご褒美なのかもしれません。(2017.3)

 

 

 

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【私の花器コレクション・3】

 

フィンランドの建築家、アルヴァ・アールトが1937年のパリ万国博の為にデザインしたガラス花器が、この「サヴォイ・ベース」です。波を意味するアールトの名のとおりのその曲線は、80年経っても古さを感じさせません。

 

MOMAのパーマネントコレクションとして、現在でも、製造販売が続いていて、色や大きさも多様にあります。サイズを問わず、不規則な四つの窪みに花がきっちりと収まりますから、飾りやすいというのもこの花器のもう一つの魅力です。

 

ちなみに、これまで紹介した花器は模倣品が多く出回っているのに対して、このサヴォイ・べースの模倣品はみかけない気がします。きっと、あまりにも世界で有名なフラワーベースだからなのでしょう。(2017.4) 

 

 

 

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【私の花器コレクション・4】

 

今から20年ほど前、当時の店近くのインテリアショップで購入したのがこのアノニマスな花器です。ちょうどセール品で、残っていた二つを衝動買いしましたからとても安価だっと思います。

 

高さが30センチ、素材はテラコッタでラフに色が塗られていますが、その自然な仕上がりは飾る場所や花を選びません。また、司教の僧服の袖のごとく下が膨らんでいて、こういった形は花を飾りやすいと言う事を知ったのもこの花器と出会ったからです。

 

旬の枝や花を仕入れた時、少し背の高いブーケを束ねた時、このアノニマスな花器は今でも重宝しています。時おり、譲って欲しいといわれてはお断りしておりますが、手に入るのであれば販売したいと思うほど使いやすいのです。(2017.5)

 

 

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【私の花器コレクション・5】

 

西洋料理にナイフとフォークを広め、フランス菓子にマカロンを伝えたのは、その昔、フィレンツェを支配したイタリアの名門貴族メディチ家ですが、この写真にあるような花器を庭にもたらしたのもメディチ家です。メディチ花器と呼ばれています。

 

何でも、その形は保有していた古代ギリシャの大理石製花器に由来しているようで、王妃マリー・デ・メディチが造成したパリのリュクサンブール公園ではお馴染みの花器です。この公園を舞台にした、エリック・ロメールの映画「パリのランデブー」でも美しく登場していました。

 

現在、メディチ花器は多くの複製品が作られていて、私も白い鉄製のものを使っています。たしかに、その古典過ぎるデザインは場所を選びますが、店内に庭の雰囲気を醸し出す花器として、ロメール好きとして、これは持っておきたい花器なのです。(2017.6)

 

 

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【私の花器コレクション・6】

 

三つの穴が空いた、ラグビーボールを一回り小さくしたほどの吹きガラスに、花や枝葉を挿して天井から吊り下げて使う「なまけものの花器」は「四月の花器」と同じ、ツェツェ・アソシエがデザインしたものです。

 

その名は、生涯のほとんどを樹にぶら下がって過ごす動物ナマケモノに由来します。ツェツェによれば、この花器はナマケモノのように葉っぱが大好きなようで、なるほど、緑を主体に少し大ぶりに飾りますと、小さな空間に森の佇まいが出来上がるというわけです。

 

今から10年前、現在の場所に移る時、真っ先に思いついたのが、作業テーブルの上にこの花器を吊り下げる事でした。以来、「なまけものの花器」は店の一番高い場所から、お客様と私を見守っています。(2017.7)

 

 

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【私の花器コレクション・7】

 

フランスのセラミスト、ジョルジュ・ジューヴを知るきっかけにもなったこの黒いセラミックの花器は、山本アッシュさんの作品で、2011年に開かれた彼の個展で購入しました。たしか作品名は「marumero」だったと記憶しています。

 

もっとも、一般に黒い花器というのは存在感が強すぎる事から、花屋はとかく敬遠するものですが、この金属のような鈍い光と重量感、そして、完全でありながらも不完全でどこか有機的な形をしたこの花器と出会った時、そんな迷いは一瞬で無くなりました。

 

また、口径が四センチ、高さが三十二センチという花器の大きさは使いやすく魅力的で、バラ、アジサイ、ダリア、アマリリス、ユーチャリスなどを現代的に美しく飾る事ができます。(2017.8)

 

 

 

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【私の花器コレクション・8】

 

このメディチ花器はこの夏、古くからのお客様から譲っていただいた私の最新コレクションです。高さが55センチ、幅が35センチ、大人一人がやっと持てる重さで、人工大理石で出来ています。

 

ご覧のように、直径が手のひらより大きいアジサイもたっぷりと飾れる大きさで、嫌味のないレリーフ模様に使い込まれた質感が味わい深く素晴らしい限りです。今では店内に古くからあったかのごとく、すっかり馴染んでおります。

 

これからが旬の、大振りのダリアや実り豊かな枝葉などを飾る上で重宝するのは間違いありません。また、同じものがもう一つありますから、店の入口に常緑樹を対に飾ってみるのも素敵でありましょう。大切に使い続けたいと思います。(2017.9)

 

 

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【冬仕度のリース】

 

リースは乾燥した後も季節を問わず飾って楽しむ事ができますが、ミモザは早春、トケイソウは初夏、といった具合に、その種類によって作る時季が限られます。この新作のリースもまた、深まる秋から雪が降る頃の限定品です。

 

春に植えて程よく成長した2種類の白妙菊に、オーストラリアから届いたユーカリの蕾付き枝葉を、環状にしたサンキライの土台に絡めています。冬の始まりを思わせる美しい銀葉から冬支度のリースと名付けました。

 

写真のものは直径約50センチで、おひとつ、¥10,800。直径約25センチは、おひとつ、¥4,320。秋冬を通して楽しむ事ができますが、もとより、クリスマスの撮影用として誕生したものですから、クリスマスのリースとして飾っても素敵です。(2017.10) 

 

 

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【モミのツリー】

 

アンデルセンの童話「モミの木」にあるように、西洋でクリスマスといえば、森から切り出したモミの木を室内に飾ることが一般的ですが、最近は写真のようなモミのツリーというのも見

かけるようになりました。

 

まるでドイツの北バイエルン地方に伝わる精霊フィングストを思い出すこの緑の飾りは、生命力を表す新鮮なモミの枝葉を逆さにしながら、木の棒を軸にピラミッド状に麻紐を用いて束ねて仕上げていきます。すなわち、これもブーケの一種というわけです。

 

モミのツリーは高さが40センチほどでおひとつ、¥7,560。もっとも、中世からクリスマスツリーはキリスト教における三位一体の象徴でもりますから、このように三角形のもの飾るという事が重要になります。(2017.11)

 

 

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【真鍮のトレー】

 

年末の定番品、ヒヤシンスの鉢植えと球根型のろうそくに適する鉢皿や燭台として出来上がったのがこの真鍮のトレーです。

 

製作を依頼したのは真鍮の専門家、ヒウラユカさんで、どれひとつとして同じものがないのも魅力的。素敵に仕上げていただきました。スクエア形がおひとつ、¥2,160から。遊び心あるドーナツ形はおひとつ¥6,480。

 

さて、お蔭様でミニ大通りに根を付けて10年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

えっ、このトレー以外にある10周年記念のオリジナル商品の発表は来年になったんでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2017.12)