2018-09-01 11:30:00

ミニ大通の並木から(20018.1〜20018.12)

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【柿渋染めの花鋏入れ】

 

レッスン中のある時、花鋏入れが話題に上りました。買った時の箱に収めていたり、タオルに包んでいたり、ペンケースを転用したりと、皆さんお気に入りがなかなか見つからないご様子。そこで、出来上がったのがこの柿渋染めの花鋏入れです。

 

製作を依頼したのは柿渋染めの専門、キクチジュンコさんで、どれひとつとして同じものがないのも魅力的。素敵に仕上げていただきました。何でも、フランスや東欧などの丈夫な古布を素材にしているそうで、しっかりした作りは花鋏を安全に持ち運べます。

 

また、見えない内張の仕上がりがお見事なのは、キクチさんのお人柄でありましょう。10周年を記念したオリジナル商品ではありますが、まずはレッスン参加者のお手元へ。(2018.1)

 

 

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【白磁の花器】

 

この白磁の花器は開店10周年を記念して出来上がったオリジナル商品です。製作を依頼したのは、ブーケレッスンがご縁で知り合った陶の専門、内藤美弥子さんで、どれひとつ同じものがないのも魅力的、素敵に仕上げていただきました。

 

何でも、ロクロを引かず、型も使わず、削る事で磁土を成形しているそうで、なるほど、この静謐で歪みのある輝きや、接地面の美しさ、そしてどこか古くて新しい印象は、そういった独自の技法から生まれているというわけす。

 

白磁の花器はおひとつ、¥9,720から。控え目ながらも芯の通った彫刻的な佇まいは、20世紀イタリアの画家、ジョルジョ・モランディが好んで描きそうではありませんか!きっと、花をより美しく飾っていただけます。(2018.2)

 

 

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【スイートピーについて】

 

プラントハンターがシチリア島でスイートピーを見つけたのは19世紀のこと。それゆえ、この花は聖書やバロック絵画には登場しません。イギリス王、エドワード7世が好んだように、アール・ヌーヴォーの時代に流行し、今日の花屋に並んでいます。

 

和名は麝香連理草。連理草が夏の季語であるように、初夏の野原で這いつくばるのが本来の姿です。ところが、日本では卒業式シーズンに合わせて春に出回りますから、つい花屋はチューリップなどと束ねてしまいます。

 

でも、この花の美しさが際立つのは、芍薬やバラとの組み合わせです。もし3月に束ねるなら、スイートピーを主役にして、それも25本は使ってシチリアの田園を意識すれば大丈夫。香り漂う素敵なブーケが出来上がります。(2018.3)

 

 

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【母の日アンケート】

 

先日、インスタグラムを利用して、アンケートを行いました。白とピンク、2種類のブーケから母の日に贈るならどちらの色かという質問です。結果は44:56でピンクが白をわずかに上回りましたが、ほぼ同等といえましょう。

 

きっと、どちらも愛情豊かなバラのブーケである事と、日本で作出されたこのロゼット咲きのバラは、感謝を伝えるのに相応しい美しさがあるからかも知れません。贈っても、贈られても、そして束ねても幸せな気分になるわけです。

 

白ならシェドゥーブル、ピンクならアムルーズ・トワやエレガント・ドレスといった品種を選んで、スノーボールと空木の枝葉を加えれば、母の日に贈るブーケが今年も出来上がります。(2018.4)

 

 

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【ライラックのブーケ】

ペルシア語で花を意味する「lilak」が語源のライラックは、現在のイランが原産で、冷涼な地域で育つ花木です。私の住む札幌では市を象徴する木でもあり、新緑が美しくなる5月の終わりとなれば、その芳醇な香りが街に漂います。

 

花屋では、冬の間からオランダ産が並びますが、これからの時季に、少しだけ出回る地物のライラックをたっぷり使ったブーケは年に1度の喜びであり、札幌の花屋の特権でもありましょう。

 

この写真のように、美しいリラ色を引き立たせるべく、リョウブとスノーボールの緑を加えて束ねるのがここ数年のお気に入りです。出来上がったブーケをミニ大通のベンチに置いたら、ハート型をした葉とともに、緑溢れる5月の札幌に幸せを与えてくれます。(2018.5)

 

 

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【スモークツリーのリース】

 

スモークツリーは雌雄異種の落葉樹で、花屋には初夏から秋に出回ります。とりわけ、その名が示す通り、開花後の花柄が煙状になった雌木においては、かれこれ30年ほど前から、初夏のフラワーデザインの花材として欠かせない存在です。

 

ただ誤解を恐れず申せば、このヒマラヤ原産の花木はユーカリのように存在感があり、花柄は20センチほどありますから、ブーケにするよりもリースにする方がその良さは引き立ちます。また、彩度の低い赤や緑の色の花柄が美しく乾燥する事も魅力的です。

 

その作り方は簡単で、環状にしたサンキライの枝に、葉を取り除いた花柄を絡めれば、スモークツリーのリースはあっという間に出来上がます。直径約センチで、おひとつ、¥5,400。飾る場所を選ばない、涼しげな夏のリースです。(2018.6)

 

 

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【花冠について】

 

写真はつい最近仕上げた花嫁の花冠で、子供の頃にタンポポやシロツメクサを摘んで遊んだ事や、トーベ・ヤンソンのムーミンに出てくるスノークのお嬢さん、あるいは、チェコの映画「ひなぎく」を思い出しながら作りました。

 

要領はリース作りと同じで、環状にしたサンキライの土台に、スモークツリー、ミズキ、カモミール、グロゼイユ、クレマチス、アイビーの順に絡めれば、その姿は、さしずめ花のティアラといった趣です。持てばブーケとして、置けば卓上飾りとして楽しめるのも花冠の魅力でありましょう。

 

そういえば、花冠は英語でカローラといいますが、日本の大衆車に同様の名前がありました。花冠が古代ローマから人々にとって身近な存在だったので、そう名付けられたのかもしれません。初期のエンブレムはCの文字の上に3つの花、花冠のデザインでした。(2018.7)

 

 

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【ヒマワリのブーケ】

 

俳句でいう季語のように、ブーケにおいてもその季節に相応しい花、誰もがその季節を感じる花というのがあって、夏といえば、ヒマワリもそのひとつです。漢字では向日葵、日回と書き、外国語や学名でも太陽と関連しているように、太陽の眩しい季節が良く似合う花でありましょう。

 

もっとも、ヒマワリはキク科の花で、暑い時期ですと器の水が濁って茎が腐りやすくなるため、水替えの手間が増えますから、わざわざブーケにするまでもないと考えたくなります。ところが、最近の切花向けのヒマワリは色や形も豊富で、束ねたくなる品種も少なくありません。

 

写真は「ホワイトナイト」という新品種で、少し白を感じるこのヒマワリは、西洋潅木の若い果実と良く合います。とても涼しげで、もう少し生産量が安定したら、レッスンのプログラムに加わえて、皆さんにも束ねていただきたいものです。(2018.8)

 

 

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【私の花器コレクション・9】

 

この黒いモノリス型の花器は、石神照美さんの作品です。高さは15センチほどで使いやすく、この無機質な陶の質感は花の美しさを引き出します。また、何も飾らなければ、曖昧な壁として空間にこっそり佇むのも石神さんならではです。

 

石神さんといえば、小さな白い家や塔が並ぶ、パースペクティブな展示があります。それは例えるなら、ヴィム・ヴェンダースの映画「ベルリン・天使の詩」の天使のごとく、陶の街を俯瞰しながら優しく見守るという仕掛けです。

 

もっとも、そんな事を述べていたら、この夏、石神さんの個展にそのヴェンダース監督が訪れて、彼女の花器を手にしたというドイツの土産話が届きました。なるほど、先の映画に習えば、きっと石神さんも、かつては天使だったにちがいありません。(2018.9)

 

 

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【ブーケ・サファリについて】

 

この写真は、つい最近仕上げた花嫁のためのブーケです。依頼では、ススキの仲間であるパンパスグラスを主役に、スワッグとして残せる事が条件でしたから、それならばと、長く楽しめて美しく乾燥する花束、ブーケ・サファリとして仕上げました。

 

もとより、フランスの花屋で1990年代に一斉を風靡したこのスタイルは、南アフリカの土着的な花を取り入れるのが特色です。日持ちがするので、当時はどちらかといえば、店先に並ぶ作り置きのブーケといった印象でしたが、近ごろは、壁飾りにもなるブーケとして見直されてきた事は、皆さんも良くご存知でありましょう。

 

ちなみに、サファリとはスワヒリ語で「長い旅」というほどの意味ですから、この一見すると風変わりに見える花束は、二人の門出をより後押ししたにちがいありません。(2018.10)

 

 

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【ローズヒップのリース】

 

ローズヒップとはバラの果実のことで、ヒップそのものが「ノイバラの果実」という古い英語から派生した単語です。ドッグローズやハマナスなど、野生のバラ、とくに一重咲きのバラに多く見られます。

 

その赤い果実は、プリニウスの時代から、薬用や美容、あるいは食用として私たちは恩恵を受けてきましたが、今日の花屋においては、リース作りの素材としても欠かせない存在です。

 

この写真のように、さまざまな種類のローズヒップで仕上げたリースは、直径25センチほどで、おひとつ、¥4,320。昨年から作り始めたこのリースは、晩秋から近づくクリスマスまで、季節の移ろいを感じながら楽しめます。(2018.11)

 

 

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【ユーカリの蕾】

 

オセアニアが生んだ特異な植物のユーカリの旬は11月からクリスマス頃です。その語源が「良い蕾」というほどの意味で、蕾はがくと花弁が合着し蓋状になっていて果実のようにも見えます。

 

これが、花屋にとっても「良い蕾」で、ブーケやリースのアクセントになるのはいうまでもありません。たとば、この写真のように、針葉樹と束ねれば、緑のブーケ、あるいはスワッグとして大いに楽しめるのです。

 

さて、お陰様でミニ大通りに根を付けて11年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 

えっ、6月から月まで日曜日も休みにしたのは、自転車に乗るためでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2018,12)