2016-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から(20016.2〜20016.12)

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【ミモザのスワッグ】

 

どういうものか、私はミモザが文句なしに大好きで、春が近づくこの時期になりますと、迷う事なく手に取ってしまいます。思いつくままに、その理由をあげるとするならば、まず、ヤドリギやスズランなどがそうであるように、市場に並ぶのが一瞬で、旬をはっきりと感じる花だからです。

 

それからもう一つ、銀色がかった葉と鮮やかな金色の房とのコントラストに、心が躍ってしまいます。前にも述べましたが、雪景色の中でしばらく過ごしておりますと、この花色がまるで南仏の太陽のごとく、眩しく見えるというわけです。

 

そんな北国に、このミモザのスワッグは、いわば春を告げる壁飾り。お互い大木で、原産地も同じオーストラリアであるユーカリと螺旋状に束ねて仕上がります。長さは50センチほどで、おひとつ、¥5,400。リースとはまた違った楽しみ方でもありましょう。(2016.2)

 

 

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【私のブーケ作り】

 

今からちょうど25年前、ブーケ作りを始めた頃は、形やデザインに重きを置いておりましたが、多分、レッスンがきっかけだと思うのですが、いつの頃からか、料理を作るように、束ねる時は手際よく、準備はしっかりと、季節感や素材の組み合わせを意識するようになりました。

 

考えてみれば、旬を楽しむブーケも料理も、味わえば、そのもの自体は無くなってしまいますが、心には残るものなのです。料理は素材65%、調理25%、感性10%、といったのは料理人のアラン・デュカスですが、私が作りたいブーケにも、この言葉がぴたりと一致します。

 

たとえば、写真のブーケの場合。素材は春の花と葉と枝で、調理、すなわち技術はスパイラルに束ねる事です。そして、感性は季節を感じるアクセントを意味します。この場合、芽吹いたシモツケの枝と若草色のスノーボールがあるからこそ、春の訪れが感じられるブーケが作れるわけです。(2016.3)

 

 

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【アジアンタムについて】

 

ギリシア語で「乾いた」というほどの意味に由来するアジアンタムは、春に鉢植えとして出回りますから、この時期には欠かせない存在です。花飾りとしてはもちろんの事、この写真のように、ブーケに加えますと、繊細で明るい緑色が、長い冬から抜け出した私たちの気分を明るくしてくれます。

 

もっとも、プリニウスの博物誌によれば、アジアンタムは水中に投げ入れても常にその葉は乾いたままだといっているうように、このシダ植物は、切って使いますと数時間で枯れてしまいます。したがって、少し手間ではありますが、必ず根を付けたままで束ねることが欠かせません。

 

そこで、アジアンタムの鉢植えを仕入れたら、まず鉢から抜いて、土をほぐして水の汚れがなくなるまで根洗いを行います。毎年、この下準備が始まりますと、スズランの日や母の日が近づいてきた事を実感するわけです。(2016.4)

 

 

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【キソケイについて】

 

漢字で黄素馨と書き、英語でイエロージャスミンと呼ばれるキソケイは、ジャスミンの仲間でヒマラヤが原産です。仄かな香りがする常緑の低木として、花市場では、春の終わりから夏に出回りますが、5月頃には、花が咲いたものが入荷して、花屋を喜ばせます。

 

この写真のように、その小さな黄色は、華やかで優しい雰囲気のバラとの相性が良く、淡いピンク色を引き立ててくれますし、旬のシャクヤクやスイートピーと束ねても素敵です。また、手に入りやすく、使いやすい花材でもあります。

 

キソケイといえば、数年前の5月下旬、銀閣寺を目指し、傘をさして哲学の道を歩いていたところ、覚えのある香りが漂ってきました。視線を横にすると、川面に垂れたこの黄色が、雨の京都を訪れた私を迎えてくれたのです。それは私の住む札幌では知る事が出来ない、初夏の美しい光景でした。(2016.5)

 

 

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【アネモネあれこれ】

 

アネモネといえば、冬の花屋に並ぶ、赤、青、紫、白といった色の花を思い浮かべますが、実のところ、アネモネにはあれこれ仲間がいて、四季を通して見る事ができます。

 

たとえば、その黄色で春を知らせる福寿草や、ギリシア神話に美少年として登場する赤花のアドニス属も、名前は違えどアネモネです。また、夏から秋の庭を飾るヴァージニアや、秋明菊もその学名はアネモネであることはあまり知られておりません。確かに、葉の感じは異なり、背丈のある花姿ではありますが、花だけを注目しますと、アネモネである事に納得致します。

 

そして、この写真のアネモネ・カナデンシス。カナデンシスとはカナダ原産というほどの意味で、初夏に咲く可憐なアネモネになります。夏至が近づく頃、森から摘み取ったように、小さなブーケにして楽しむのが私のお気に入りです。(2016.6)

 

 

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【ローズマリーについて】

 

ラテン語で「海のしずく」というほどの意味があるように、ローズマリーは波の音が聞こえる範囲で良く育つ常緑の小低木です。プリニウスの時代には既に冠婚葬祭で用いられていたようですから、この植物は昔から私たちにとって身近な存在なのかもしれません。

 

たとえば現代でも、薬草として民間療法や料理に使う事もありますし、香水の起源でもあるハンガリー水といえば、この植物の蒸留酒です。また、ヤナーチェクの歌劇「イエヌーファ」の舞台演出に、ローズマリーの鉢植えは欠かせない存在でありましょう。

 

もっとも、この写真のように、ローズマリーはリースとしても楽しめます。直径が35センチほどの野趣溢れる仕上がりは、壁掛けはもとより、卓上に飾っても素敵です。おひとつ、¥6,480。受注製作になります。(2016.7)

 

 

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【洋種ヤマゴボウについて】

 

白と緑のブーケというのは面白いもので、初夏の頃だと涼しく感じていたものが、暑さが増すに連れると大して感じなくなる事があります。そんな時に重宝するのが、洋種ヤマゴボウの存在です。この写真でお気づきのとおり、マゼンタに近い茎の色がどういうわけかブーケの印象をより涼しく見せてくれます。

 

とりわけ、その小さな白い花序は垂れ下がっているのも大変よろしく、スカビオサや人参の花といった草花はもちろんの事、アジサイとも美しく調和するのは嬉しい限りですし、深いボルドー色のダリアなんぞと束ねますと、夏の洗練されたブーケも出来上がります。

 

別名、アメリカヤマゴボウともいうように、この花は北アメリカ原産の多年草で、明治時代に日本に伝わった帰化植物です。在来種である食用のヤマゴボウとは別物でその根は食べられません。区別するために洋種と付きます。ちなみに、食用の方はキク科でこちらはヤマゴボウ科です。(2016.8)

 

 

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【コスモスについて】

 

コスモスといえば、秋の七草のように万葉の時代から野原に咲いていると想像しがちですが、実際は違っていて、この花はメキシコ原産の植物です。明治後期に伝わった日本では、大正時代にはハイカラな花として流行し、今では秋の花として、私たちをノスタルジックな情緒へと誘い出します。

 

この写真のように、パニカムやススキといった禾本科植物を加えたブーケは満月と一緒に楽しめるこの季節の定番です。もっとも、キク科で頭状花序のコスモスを束ねる時には、あえて花の高さを揃えない方がより自然な印象に仕上がるというのはここだけの話。

 

ちなみに、名前の由来である、ギリシア語のコスモス・ビピンナツスには「秩序ある美しい飾り」というほどの意味があります。どうやら、花ではなく羽根状の葉姿の事を指しているようで、名付けたスペインの先人とは何だか友達になれそう。(2016.9)

 

 

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【アナベルのリース】

 

アメリカノリノキの園芸種であるアナベルは、以前この欄で述べたように、乾燥した花姿も綺麗ですから、リースとしても楽しめます。壁掛けにしたとしても、卓上に飾ったとしても、その移ろいゆく秋の緑が、部屋の中を華やかに演出してくれる事はいうまでもありません。

 

この写真のように、環状にしたサンキライの枝を土台として、アナベルを敷き詰めるように絡めれば、自然な雰囲気のリースが出来上がります。とりわけ、近年出回り始めた八重咲きの品種、ヘイズスターバーストだけで作りますと、その星形の小さな装飾花が目を惹く事でありましょう。

 

アナベルのリースは直径が約30センチほどで、おひとつ、¥4,320。もとより、この花はアジサイの仲間として北米の野山に自生していたわけですから、リースの形はあまり整えず、歪んだドーナツ状に仕上げた方が、その魅力はより一層引き出されます。(2016.10)

 

 

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【クリスマスのリースその2】

 

クリスマスは、太陽を励ます生命力の祝祭として、もともとヨーロッパにあった冬至祭が発展したものですから、そのリースは冬でも美しい常緑の植物で作る事がやはり重要です。むろん、毎年私が作っているモミを使ったクリスマスのリースもその定義によりますが、今年はもう一つ、新しいリースを作りました。

 

環状にしたサンキライの枝を土台として、コニファー、スキミア、野イバラの順に絡めて仕上げたのが、クリスマスのリースその2です。スキミアはモミと並んで、イギリスではクリスマスを象徴する植物ですが、その臙脂色の蕾は、雪の中で一際引き立つ事はいうまでもありません。

 

ご覧の直径約50センチ(写真)のものがおひとつ、¥18,900。直径約30センチはおひとつ、¥10,800。ご予約のみでの販売です。扉飾りだけではなく、卓上飾りとしてもお楽しみいただけます。(2016.11)

 

 

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【インスタグラムについて】

 

皆さんも良くご存知の通り、昨年の夏から、写真共有サービスのインスタグラムを始めました。きっかけは、レッスン内容をお知らせするのに便利だと、知人に勧められたからですが、写真好きの私がすぐに魅せられしまった事は申すまでもありません。

 

洋の東西を問わず、ひとつのブーケについて、会話ができるというのも面白さの一つで、花屋にとっては21世紀のショーウインドー。1日1枚、投稿しておりますので、これからも引き続きお楽しみください。

 

さて、おかげさまで、ミニ大通りに根を付けて9年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

えっ、そのインスタグラムで、憧れの花屋、クリスチャン・トルチュからの唯一のコメントが、花以外の事だったでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2016.12)