2015-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から(20015.2〜20015.12)

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【ベビーティアーズについて】

 

属名のソレイロリアは、プラントハンターの名前にちなみますが、私たちに馴染み深い呼び方は、世界一小さな花が咲くことから名付けられた、ベビーティアーズでありましょう。

コルシカやサルディーニャといった地中海の島に自生していたこの常緑つる性植物は、その若草色が春の訪れを感じさせてくれます。

 

この写真のように透明なガラスの器に入れると土の色が引き立って緑がより美しい姿です。また、透明なガラスだからこそ、水やりも、土が乾いたら湿らせれば良く、管理の点からもこれが最適な仕様であることはいうまでもありません。おひとつ、¥830。

 

ちなみに、イタリアではこの植物の育て方を表すかのごとく「ほったらかす」、イギリスではその緑を称えて「アイリッシュ・モス」というようです。ひとつの植物に様々な名前がある場合、それだけ多くのひとびとに愛されている証でもあります。(2015.2)

 

 

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【春の訪れ】

 

香りの良い、異なる3種のピンク色のバラと、ミモザ色、杏色、桃色のチューリップ、桜色のスイートピー、若草色のスノーボール、豆の花、ローズゼラニウムを束ね、ハランを巻いた器に、クラリネビウムの葉を一緒に飾ったこのブーケ。

 

実は先日、東京で開催された、クリスチャン・トルチュのレッスンで私が製作したものです。ガラスの器に葉を巻いて花器にする事。花と葉を螺旋状に束ねる事。季節感を考え、自然な技術、雰囲気で仕上げる事。その全てがこのブーケに詰まっております。

 

今から24年前、私はこういった彼の新しいブーケに衝撃を受け、花の世界に引き込まれました。でも、直接指導を受けたわけではない、いわゆる独学なので、いつか本人に自分が作ったブーケを見てもらいたいと思い続けていたわけです。その夢がこの日、やっとかないました。私の心に春が訪れたのです。(2015.3)

 

 

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【母の日に作るブーケ】

 

母の日にブーケを作るのは、今年で25回目になります。籠に盛ったフラワーアレンジメントから始まって、給水スポンジを用いずにスパイラルブーケを作るようになり、その器も葉で覆い、器付ブーケの形に落ち着いたのが、今から20年ほど前。

 

また、そのブーケも、スズランを提案した時代もあれば、蕾のシャクヤクを使って咲かなかったり、アスパラを器に巻いて萎びさせてしまったり、1種類の花と緑だけで寂し過ぎたりと、失敗が無かったとはいえません。

 

でもそのような経験があったからこそ、母の日に作るブーケは、季節の素材で美しく作るのはもちろんのこと、貰って嬉しくなるようなものに仕上げられるようになりました。もっとも、このようなロゼット咲きのバラであれば、誰が手にしても喜ばれることでしょう。(2015.4)

 

 

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【シャクヤクについて】

 

ヨーロッパの花屋がシャクヤクを「5月のバラ」と呼ぶように、5月に入るとこの花はバラ以上の美しさと華やかさで私たちを楽しませてくれます。中でも私のお気に入りは、花弁の多い八重咲きの品種です。たとえば、この写真のようにバラに少し加えて束ねますと、とてもエレガントなブーケに仕上がります。

 

フランス風にピヴォワンヌといえば、ギリシア神話の医薬神パイアンがその語源であることに気が付きますが、芍薬とも書くように、この花は西洋でも東洋でも古くから薬草として用いられてきました。もっとも、5月の花屋にとっては、人の心をときめかす薬草といったところでしょうか。

 

ちなみに、退廃する貴族を描いたルキノ・ヴィスコンティの映画「山猫」では、満開のシャクヤクがクローズアップされる場面が出てきます。その花弁がもうすぐ散ってしまう、華やかさと儚さを併せ持つのも、この花の魅力です。(2015.5)

 

 

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【デルフィニウムについて】

 

ギリシア人は蕾の形からイルカを示すデルフィン、イギリス人はヒバリの蹴爪というほどの意味のラークスパー、日本では飛燕草という具合に、この花には様々ないいまわしがありますが、私の感覚にぴたりと一致するのはフランスでの花ことば「野原のよろこび」です。

 

この写真のように、ヴェロニカ、オルラヤ、グリーンミスト、ワイルドオーツと束ねれば、夏の日差しを浴びた田園が手の中で出来上がります。いい換えてみれば、このシャンペトル風の素朴なブーケそのものが「野原のよろこび」ともいえましょう。

 

もっとも、農事歴では、郭公が鳴くと種を蒔く季節といいますが、花屋ではデルフィニウムがちょうど出回り始めます。郭公が鳴いたら田園風のブーケの始まりというわけです。ちなみに、この花は秋の草花と組み合わせても、また素敵なブーケに仕上がります。(2015.6)

 

 

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【亜麻について】

 

アンデルセンの童話にも「亜麻のこころ」というのがあるように、この花はヨーロッパの北国で昔からリネンや紙を作るべく栽培されてきた植物で、「最上級に有用な」というほどの意味の学名がついています。また、強く成長する植物であることから、病や悪魔を退ける活用の仕方もありました。

 

ただ、切り花には向いておらず、亜麻を楽しむとすれば、地植えか、この写真のように、苗を柳で編んだ籠などに入れて飾るのが最適です。花色は青が多いのですが宿根だと白も見つかります。もっとも、亜麻色に乾燥させてリースにしても素敵でありましょう。

 

ちなみに、私の住む北海道でも亜麻は身近な植物で、美しい亜麻畑が広がる当別町では毎年7月に亜麻まつりが開催されています。札幌から自転車で1時間。ツールドフランスをテレビ観戦して気分が高まったら、夜明けとともにさあ出発です。(2015.7)

 

 

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【リースあれこれ】

 

プリニウスの時代であれば、リースは今日でいうところのブーケのような存在でありましたから、その組み合わせ方や花材については、乾燥後の事を考える必要があるにせよ、決まりがあるわけではありません。とりわけ、緑の移ろいを楽しむようなものであれば、あれこれできるというわけです。

 

写真は、最近作りおろした10種類のリースになります。これは作家さんからのご依頼品で、木彫の動物と組みわせて展示する趣向だった事もあり、どれもが一点物でありました。テーマに沿って、ボマルツォのバロック庭園を妄想して仕上げたわけですが、そのほとんどが初めて作ったものばかり。

 

中にはビギナーズラックな出来栄えがあった、というのはここだけの話として、時には「視界を遮る生い茂った緑」とか「静寂と危険な気配」といったお題をいただき、考えて作るリースもまた新鮮な喜びがございます。

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【アナベルについて】

 

アジサイの仲間であるアナベルは、北アメリカ原産の落葉低木、アメリカノリノキの園芸種です。手毬状に付けた花房は日本のアジサイに良く似ておりますが、茎は細く葉も薄いので、その違いはすぐにわかるかと思います。

私の住む北海道では、夏から秋の庭や公園でも最近はよく見かけるようになりました。

 

このアナベルの魅力はその花色と花姿です。花色は蕾から咲き進むにつれて、緑から白に、白から再び緑に、そして緑から赤茶へという具合に変化していきます。また、乾燥した花姿も綺麗ですから、リースを作って楽しむというのも素敵な考え方でありましょう。

 

写真は、ちょうど1年前のレッスンで、八重咲きのアナベル「スターバーストグリーンホワイト」で束ねた田園風のブーケです。たしか、この日は即興でテーブル飾りも実演しました。アイビーとククミスを加えて仕上げた緑のマリアージュ、といった雰囲気で。(2015.9)

 

 

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【秋バラについて】

 

バラの切り花が美しい時期は年に2度訪れます。ひとつは、春の終わりから7月にかけ一番花は、大輪なものが多いのが特徴です。そしてもうひとつは、本格的に秋が始まる10月頃で、秋バラという言い方をします。

 

その特徴といえば、初夏のものと比べて花が一回り小さい分、寒暖差によって色合いがはっきりしている印象です。紅茶でいうところの、セカンドフラッシュ、あるいはオータムナルというわけで、深い味わいがありますから、バロックブーケのように、多種の花材を束ねるには好都合になります。

 

中でも、私がもっとも手にする品種はシェドゥーブルで、その名の通り、白いバラの中では「傑作」です。微香ではありますが、花弁の多さや、クラッシックな咲き方はとても気品が溢れています。この写真のように、秋の果実や草花と合わせますと生きた17世紀のオランダ絵画が楽しめるわけです。(2015.10)

 

 

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【ナンキンハゼのリース】

 

ナンキンハゼは、私の住む北海道では馴染みが薄い樹木の為、美しい新緑や紅葉については写真でしか知りません。けれども、晩秋に市場に僅かながらに出回る、茶色い実が裂けた後の、蝋を含んだ白い種の姿でしたら身近な花材です。

 

この写真のように、土台にしたウンリュウヤナギに、鳥の巣のように絡めて作るナンキンハゼのリースは、私が作るリースの中で、もっとも長く楽しめることでしょう。なぜなら、葉や実で作るリースとは異なり、この硬質な白い種は乾燥しても大きな変化がなく、四季を通して楽しめるからです。

 

直径約35センチのナンキンハゼのリースは、おひとつ、¥8,640。数が限られる為、ご予約のみの販売になります。因みに、漢字では南京櫨と書きますが、南京には珍しいもの、小さくて可愛いものという意味があるようです。(2015.11)

 

 

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【スワッグについて】

 

スワッグとは、「花綱飾り」というほどの意味で様々な形状がありますが、ここで、ご紹介するのはブーケを逆さかに吊るしたような作り方です。写真は、クリスマス向けに仕上げたものですが、少し立体的なことに気づかれたでしょうか。

 

実は、これもスパイラルブーケになっていて、枝葉を螺旋状に束ねる事で、自然な雰囲気の壁飾りに仕上がります。おひとつ、¥5,400。

 

さて、おかげさまで、ミニ大通りに根を付けて8年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

えっ、最近のレッスンでは、元ラガーマンとして、花よりもラグビーの話ばかりしてるでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2015.12)