2014-12-01 11:30:00

ミニ大通の並木から(20014.2〜20014.12)

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【アネモネについて】

 

アネモネは、ギリシア神話だと美少年アドニスとして、聖書では野の花として登場する地中海原産の植物で、昔から人びとに愛されている花のひとつです。とりわけ、フランスでは16世紀にトルコから輸入する以前から栽培が盛んで、さまざまな園芸種が存在します。

 

中でも、マリアンヌ種のパンダは、芯が黒く、緋色がかった蕾が特徴の白花で、私が最も好むアネモネです。かつては冬のパリの花屋でしか見かけませんでしたが、近ごろでは、北海道産も市場に出回りますから、もうパリの花屋をこの時期羨ましく思う必要がないというもの。

 

この写真のように、大葉のユーカリとモクレンでブーケは簡素に仕上げるのが定石です。ちなみに、ロシアのソチから520km離れたアルメニアの国花がアネモネであることは、あまり知られておりません。(2014.2)

 

 

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【ヘレボラスについて】

 

近年、雪どけとともに札幌の花屋を賑わすようになったフェチダスは、いわゆる有茎種のヘレボラスです。同類でクリスマスローズと呼ばれるるニゲルや、春咲きのオリエンタリスよりも、このフェチダスは切り花として長く楽しめることも人気の秘密でありましょう。

 

写真は、ちょうど1年前のレッスンで作った「早春の庭から」をテーマにしたブーケです。スノードロップやフリチラリアとともに、セラドングリーンの葉に萌黄色をしたフェチダスの花姿が、私たちに春の喜びを教えてくれます。

 

ちなみに、旅帰りのお客さまによれば、先日、黒いマリアで名高いスペインの岩山モンセラに登ったところ、野生のフェチダスが咲いていたそうです。これは旅に行かねばなりません。ちょうどこの山の麓では自転車のレース、カタルーニャ1周もあることですしね。(2014.3)

 

 

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【スノーボールについて】

 

申すまでもなく、アネモネやミルトなど、私たちが良く知る自生植物の多くは、ギリシア神話や聖書などに登場するわけですが、スノーボールの花は17世紀フランドルの画家たちが描くまで待たなければなりません。それもそのはず、このアジサイに似た手鞠花は、バロック時代に生まれた花卉植物なわけです。

 

いわんや、ブーケに適した花でありますから、ラナンキュラスやチューリップといった春の花とは美しく調和します。また、花色も素敵で、その若草色は、まるで雪の中から顔を出したふきのとうのように、春の目覚めを感じることでありましょう。

 

「光を意識してスノーボールを選ぶ」とは、シャンペトルブーケの先駆者で、フランス・ノルマンディー出身の花屋、カール・フューシュがいった言葉ですが、北国に住む私の春の心には良く響きます。(2014.4)

 

 

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【薔薇について】

 

私がこの仕事を始めた当時、花屋の薔薇といえば、剣弁咲きの、微香でしっかりした茎のものが主流で、どこか人工的な印象がありました。これは、挿して美しい、フラワーアレンジメント向きの品種が多かったからであることは、いうまでもありません。

 

それが、21世紀になりますと時代は変わって、束ねて美しい、ブーケ向きの品種が数多く栽培されるようになってきたました。ルドゥテが好んで描きそうな花姿のシェドゥーブル、ミルラ香のフェアビアンカなど、最近は、束ねても、贈っても、貰っても、飾っても、嬉しくなる薔薇が身近になっております。

 

中でも、この写真のピンクイブピアッジェは、詩人サッフォーが喜びそうなダマスクの強い香りが素晴らしい。手にしただけで、ローズガーデンを散策している気分になりましょう。もっとも、あなたが自転車乗りであれば、5月はこのローズ色にもときめくはずです。(2014.5)

 

 

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【アジサイについて】

 

夏の暑い時期でも、長く楽しむことができるアジサイは、この写真のように、旬のブルーベリーの枝葉などと束ねれば、素敵なブーケが簡単に出来上がります。中でも、白や緑色の切り花向けの品種は、部屋の中はもちろんのこと、私たちの心までも涼しくしてくれる一品です。

 

学名のハイドランジアには、水の容器といった意味があるようで、もうずいぶん昔、ルキノ・ヴィスコンティが、水の都ヴェニスの街を舞台にした映画を撮った時、この花を象徴的に登場させていたのも、そういった理由があるからにちがいありません。

 

もっとも、フランス語でいうオルタンシアが、ラテン語で庭を意味するホルトゥスという言葉が語源だと知れば、この日本生まれの花が、18世紀ヨーロッパに伝わり、庭園で愛され、西洋で盛んに品種改良されてきたということは容易に想像できます。(2014.6)

 

 

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【ラシラスについて】

 

スイトピーの仲間で、蔓にいくつもの花が付いてこの季節に出回るラシラスは、枝スイートピー、宿根スイートピー、サマースイートピー、ペレニアルピー、連理草など、花屋によってその呼び方は様々ですが、私はイギリスのガーデナーのように学名のラシラスと呼んでいます。

 

ラシラスは古代ギリシアのテオフラストスの薬種書にマメ科の植物の名として登場するように、園芸植物というよりも、野原に自生していた薬草です。だからブーケにする場合は、野原のスイートピーといった趣で束ねると素敵になりましょう。

 

もっとも、「四月の花器」をお持ちであれば、この写真のように、ブルーベリー、ブラックベリー、アネモネ・バージニアニ、グリーンスケールを飾れば、北方の夏が出来上がります。ちなみに、夏の北海道の浜辺に咲くハマエンドウもラシラスの仲間です。(2014.7)

 

 

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【ラベンダーについて】

 

ラベンダーをブーケにして楽しむと考えた時、私の念頭に浮かぶのは次の二つです。一つは、ラバンティ系のラベンダーが生育する、地中海沿岸の石灰岩の多い温暖で乾燥した地域を妄想した、オリーブやネズ、ローズマリーなどと束ねるプロヴァンス風のブーケ。

 

そしてもう一つは、この写真のように、私の住む北海道で栽培される寒冷地向きのアングスティフォリア系のラベンダーを、乾燥させて作るテーブル飾りです。この系統は香りが強くドライフラワーには最適とされ、中でも色が鮮やかな「濃紫3」という品種を使って仕上げています。

 

ちなみに、向かって右側は定番のタンバル、左側は新作の器付です。これは、ちょうど一月前、上富良野町の日の出公園から十勝岳温泉まで自転車に乗った時、沿道に続くラベンダーと白樺の対比が美しく、ちょっと閃めいて仕上げてみたというものです。(2014.8)

 

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【クレマチスについて】

 

ギリシア語で葡萄の枝というほどの意味クレマを語源とするクレマチスは、夏と秋が旬の蔓植物です。日本では「鉄線」とも呼ばれますが、イギリスでは「旅人の喜び」といって旅宿に植える風習があります。種類も豊富で、ブーケにする場合それぞれの特徴を見極めて束ねなければいけません。

 

たとえば、1本の蔓に花が沢山ついているものは、アジサイに絡めながら束ねると上手くまとまります。それから、花が小さい品種でしたら、可憐なバラと組み合わせても素敵でしょう。もっとも、この写真のように直立性で大輪の八重咲きの場合は、田園風に仕上げることで秋の月夜と楽しむことができます。

 

一方、北海道ではこの時期、白い小さな花を付けた仙人草を見かけますが、こちらは日本原産のクレマチスです。秋色のアジサイや白いバラなどと組み合わせますと、上品で洗練されたバロックブーケが出来上がります。(2014.9)

 

 

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【ダリアについて】

 

ふた昔前に、ダリアといえば、フラワーアレンジメントに不向きな過去の花として、市場にはあまり出回っておりませんでした。たしか、その当時手に入ったものは、北広島市の生産者が作る、蕾付の白いポンポン咲きの品種ぐらいでしょうか。

 

それがここ数年、さまざまな品種のダリアが花屋に並ぶようになったわけですから驚きです。これは、最近束ねて美しいブーケを作る花屋が増えてきたということもありますが、やはり、この写真の「黒蝶」が21世紀になって登場したことによって、ダリアの魅力が見直されたのだと思います。

 

もっとも、この新品種が秋田県にあるダリア園で生まれ、世界中に広まったというのもさらなる驚きです。それは、日本の育種家が花屋の潮流までも作ったことも意味します。その華やかなボルドー色は私たちが求めていた新しい秋の花だったというわけです。(2014.10)

 

 

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【マルメロとマグノリアについて】

 

花の少ない季節になっても、自然の楽しみ方はまだございます。たとえば、この写真の左、マルメロを飾ってその良い香りに気分をよくするというのも晩秋ならではです。ヴィクトル・エリセの映画「マルメロの陽光」で主人

公が毎年秋になるとマルメロを描いたように、私はこのアラブの果実を並べております。

 

もっとも、しばらく飾ったマルメロは、ポルトガル人のごとく、皮を剥いて煮詰めれば、いわゆる本来のママレードが出来上がりますし、ローマ人のように、入浴時に楽しむというのも素敵な行いでありましょう。心も温まるかもしれません。

 

それからもう一つ、この写真の右、ガラス器に巻いている葉がマグノリアです。その葉の裏はスエードの調な質感と薄茶色で、美しく乾燥しますから、自然素材の花器としても重宝します。秋から春までのブーケを飾る器としてぴったりなので、この時期には欠かせない枝葉です。(2014.11)

 

 

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【お正月のタンバル】

 

松葉を巻いたガラス器に、新芽が赤く染まるメラレウカ、山シダの仲間シースター、そしてシクラメンを加えれば、昨年から作り始めた「お正月のタンバル」の完成です。

 

ソロモンの冠という呼び方があるシクラメンを、私が決まって松と組み合わてブーケに仕立てるのは、この花が冬の地中海沿岸地域の松林、とりわけ、アレッポ松の下に自生するからだというのはここだけの話。おひとつ、¥3,240。

 

さて、おかげさまで、ミニ大通りに根を付けて7年が経ちました。皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

えっ、今年は趣味の自転車レースで初めて表彰台に上ったものの、その後、調子にのって挑んだツールド北海道では転倒してリタイヤしたでしょうって?まあ、そんなことはいいっこなしよ。(2014.12)